2020 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜の曲率・脂質パッキング状態変化を誘起する機能性ペプチドと展開
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
20H04707
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二木 史朗 京都大学, 化学研究所, 教授 (50199402)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞膜 / 膜曲率 / 膜流動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜は、種々の分子が密集する「究極の分子夾雑環境」である。この分子夾雑環境の中で細胞膜との特異的相互作用により膜の形や流動性を制御できれば、細胞運動や、分化、分裂などを制御する分子ツールが得られる。また、膜との相互作用を介して、膜に担持されたタンパク質の働きを調節できれば、「細胞内イベント」を制御するユニークな分子ツールとなり得る。本研究では、「分子夾雑環境下に膜の形状や流動性というソフト環境を制御・調節する機能性ペプチド」の創出と機能評価・解析を通して、「生命化学分野における新しい細胞操作技術(生体膜システム工学)」としての一層の展開を図ることを目的とした。本年度は、特に細胞膜とペプチドとの相互作用調節による膜曲率増強・膜構造変換促進を目的に新規ペプチドの創出を行い、9アミノ酸からなる膜曲率の誘導活性を有する両親媒性ペプチドが、エンドサイトーシスによる細胞取込を促進する効果を有することを見出した。また、曲率誘導ペプチドEpN18の3量体化により、単量体の1/80の濃度で単量体と同等の脂質パッキング緩和活性とオクタアルギニンの膜透過促進効果を有することを示した。さらに、曲率感知ペプチドにより、菌体から放出される細胞外小胞を効果的に検出する系も構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、特に細胞膜とペプチドとの相互作用調節による膜曲率増強・膜構造変換促進を目的に新規ペプチドの創出を行い、9アミノ酸からなる膜曲率の誘導活性を有する両親媒性ペプチドが、エンドサイトーシスによる細胞取込を促進する効果を有することを見出した。また、曲率誘導ペプチドEpN18の3量体化により、単量体の1/80の濃度で単量体と同等の脂質パッキング緩和活性とオクタアルギニンの膜透過促進効果を有することを示した。さらに、曲率感知ペプチドにより、菌体から放出される細胞外小胞を効果的に検出する系も構築することに成功した。また、膜への曲率誘導、膜流動性を向上させるペプチド配列情報や受容体の活性化制御に関しても検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、特に、(i)膜への曲率誘導、膜流動性を向上させるペプチド配列の検討、ならびに(ii)多量体化効果において今後の大きな発展が期待されることが示唆された。新たなペプチドの設計にも取り組み、一層の効率化を行うとともに、原理の究明とこれ基づく新規細胞操作技術の樹立を図りたい。
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