2020 Fiscal Year Annual Research Report
Phenomenology of primordial gravitational waves from massive gravity and new physics
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
20H04749
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
水野 俊太郎 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60386620)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙物理(理論) / 原始重力波 / 有質量重力子理論 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマ「有質量重力子理論によって生成される原始重力波の現象論的側面」に関連し、 論文``Inflationary gravitational waves in consistent D -> 4 Einstein-Gauss-Bonnet gravity” (JCAP 01 (2021) 054)を発表した。この研究では、ゴースト不安定性を伴わずに4次元極限を取ったアインシュタイン・ガウス・ボンネ理論を考え、この理論では有質量重力子理論と同様にローレンツ対称性を破っている。そして、そこで生成される原始重力波では通常のアインシュタイン理論の場合とは異なる分散関係が成り立ち、宇宙膨張率と重力波の振幅の関係性が変化すること、重力波の非ガウス性が通常よりも強くなることを示した。これはローレンツ対称性が破れるときに原始重力波の非ガウス性が強くなる別の具体例なので、有質量重力子理論に基づくモデルにおける原始重力波の現象論の解釈において有用な結果である。また、広い意味で原始重力波の生成される高エネルギー期の初期宇宙シナリオを制限する研究として論文``Universal upper bound on the inflationary energy scale from the trans-Planckian censorship conjecture” (Phys. Rev. D102 (2020), 021301(R)) を発表した。この研究で我々は、最近提案されている「超弦理論に基づく低エネルギー有効理論においてはプランクスケールよりも小さいスケールを古典物理学的に観測出来ない」とするトランスプランキアン検閲官仮説の初期宇宙への適用を考えた。そして、インフレーション期の宇宙膨張率の上限がインフレーションから輻射膨張宇宙への遷移過程に関わらずに再加熱温度によって与えられることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において、私は自分が提案した有質量重力子理論に基づいたモデルでの原始重力波生成のシナリオの可能性を現象的側面、理論的側面から探ることを計画の中心に添えていた。その一方で、モデルを限定しすぎてしまうと、興味深い研究成果を出したとしても、それに対して注目する研究者も限定されてしまうという懸念はもっていた。その意味では、2020年度に発表した論文``Inflationary gravitational waves in consistent D -> 4 Einstein-Gauss-Bonnet gravity”、``Universal upper bound on the inflationary energy scale from the trans-Planckian censorship conjecture”はどちらも今回の研究成果の適用範囲を広げる意味をもつ重要な結果である。前者ではローレンツ対称性の破れと原始重力波の非ガウス性が関連していることを示しているし、後者ではもし有質量重力子理論を超弦理論の低エネルギー有効理論として導出出来れば、このインフレーションのエネルギースケールに対する制限が適用され、より具体的な原始重力波の検出について議論できるので、これらは予想以上の成果であるといえる。 その一方で、コロナ禍で所属高専において授業を遠隔で行わなければならない期間が生じたり、学生に対するサポートが例年以上に必要となったりしてエフォートが当初想定したよりも本研究に割り振れなかったことにより、有質量重力子理論自体の研究の進展が想定したよりも少し遅れているので、全体としては「(2)おおむね順調に進展している」感じだと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的の項目で設定した今回の期間内に明らかにするトピックは有質量重力子理論によって生成される原始重力波の現象論的側面と理論的側面の2つに大別できる。そのうち、現象論的側面については、2020年度の発表論文`Inflationary gravitational waves in consistent D -> 4 Einstein-Gauss-Bonnet gravity”の結果もふまえ、有効場アプローチをもとにローレンツ対称性の破れた重力理論を幅広く扱った原始重力波の現象論の研究を進める。 理論的側面については、2020年度の計画に含めていた「有質量重力子理論における質量項の減衰時の振る舞いに対する自然な模型の構築」について、質量項の減衰を与える具体的な機構としてbigravityに基づいたモデルを考える。また、多少観測などの現象をもとに検証できる可能性は低いかもしれないものの曲がった時空の場の理論の重要問題として数学的に関心を集めており、2021年度の計画に含めていた「原始重力波の相関関数に対してのMaldacenaの整合性条件」についての研究も進める。また、2020年度の発表論文``Universal upper bound on the inflationary energy scale from the trans-Planckian censorship conjecture” の結果をふまえ、超弦理論の低エネルギー有効理論として今回考えている重力子理論を導出できれば、インフレーションのエネルギースケールがより制限され、具体的な原始重力波の検出が議論できるので、この可能性についても考えてみたい。
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