2020 Fiscal Year Annual Research Report
New cosmology researched by primordial black holes
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
20H04750
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
郡 和範 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50565819)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブラックホール / ダークマター / インフレーション / 重力波 / 宇宙マイクロ波背景放射 / ガンマ線 / 宇宙線 / 陽電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年9月にNANOGrav12.5yrグループにより、電波によるパルサータイミングの観測による変調について、ナノヘルツ帯での重力波背景放射のシグナルの可能性があるとするデータが発表された。K. Kohri and T. Terada,Phys.Lett.B 813 (2021) 136040において、それが初期宇宙のインフレーションが作った小スケールの大きな曲率ゆらぎの非線形効果でつくられた背景重力波であるとするアイディアを発表した。そうしたゆらぎは同時に太陽質量程度の質量の原始ブラックホールを作る。そうした原始ブラックホールが衝突する際にもヘルツ帯の背景重力波を生成し、将来のLIGO-Virgo-IndiGO-KAGRAの重力波実験でこれを検証できることを示した。
Chul-Moon Yoo, TomohiroHarada, Shin'ichi Hirano, Kazunori Kohri, PTEP 2021 (2021) 1, 013E02では、ピーク統計を用い、曲率ゆらぎが任意のスペクトルを持つ場合に 作られる原始ブラックホールの量の推定について議論を一般化した。また、TomohiroHarada, Chul-Moon Yoo, Kazunori Kohri, Yasutaka Koga, Takeru Monobe,Astrophys.J. 908 (2021) 2, 140において、宇宙初期の放射優勢宇宙に、曲率ゆらぎから生成された原始ブラックホールのスピンについて、ピーク統計を用いて詳細に議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度は順調に原始ブラックホール関係のメインの論文3本を発表し、また、関連論文を11本発表した。2020年度の達成目標であるピーク統計を用いた詳細な原始ブラックホール生成の研究について、共同研究者が優秀であることに加え、彼らとの連絡がスムーズに行われ、それら研究を期待以上に早くまとめあげられた点がその理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画 C) 原始ブラックホールの周りの降着円盤形成の数値シミュレーション: 計画 A)で定式化を下に、原始ブラックホールへの降着を数値シミュレーションを実行する。得られた結果をもとに、投稿論文を執筆する。計画E)原始ブラックホールとインフレーション理論・素粒子物理学との整合性
原始ブラックホールは、宇宙が生まれて間もない頃、小さなスケールの大きなゆらぎを持つ領域が潰れることで形成される。そうしたゆらぎを生むメカニズムとしてインフレーションの量子ゆらぎが有力な機構として知られている。大スケールでのCMBなどの観測を満たしながら、小スケールでは原始ブラックホールを生成する量子ゆらぎをつくるインフレーションモデルの理論整備が急務である。あるクラスのインフレーションモデルはゆらぎの非ガウス的な分布を予言することが知られている。皮肉にも、そのようにゆらぎの分布がガウス性から著しくずれる場合、PopIII星の形成量が大きく変更を受けることが知られている[Koushiappas and Loeb, 2017]。つまり、インフレーションモデルに依存して、天体起源説と原始ブラックホール説の両方が影響を受けることになるのである。両者をはっきりと区別することにより、インフレーション理論を検証し、その基礎となる素粒子理論の新理論の情報を得ることを目標とする。
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