2020 Fiscal Year Annual Research Report
Why do plants accept symbiotic bacteria? Analysis of chemical communication that contributes to building mutualism.
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
20H04755
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 英幸 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20344492)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 相利共生 / 共生菌 / アブシシン酸 / セオブロキシド / ジャスモン酸 / サリチル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の成長に有益な効果をもたらし植物と共生関係にあるエンドファイトが知られており、様々な研究がなされてきた。しかしながら、植物とエンドファイトの相利共生構築に関して未解な点が多く、これらを『生物間シグナル』の見地から明らかとする。当該の菌の代表例としてトマトに相利共生関係を成立させるVeronaeopsis simplex、白菜にHeteroconium chaetosnira、アスパラガスにPhialocephala fortiniiが研究報告されている。また、植物化学調節剤の可能性を模索し、研究成果の社会実装を目指す。 植物に有益な作用をもたらすエンドファイトと植物の相利共生構築に関して、未解明な点が多々あるが、研究期間内に次項を明らかにする。A】共生菌、Veronaeopsis simplex培養濾液に含まれ、植物に劣悪環境突破力を付与する低分子生理活性物質、B】当該の低分子生理活性物質により植物が誘導する生理活性発現機構、C】共生菌の感染機構の解明とその応用、D】他の共生菌による劣悪環境突破力付与の生物現象の証明と当該の因子となる低分子生理活性物質。本年度、2020年度は上記項目A】、D】について、知見が得られた。特に項目A】については、当該の菌の培養濾液より (2R,3S,4S,5R)-2-ethoxy-2,5-bis(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-3,4-diol を単離し、植物の栄養源となりうる化合物であった。また、D】についてはアスパラガスの共生菌であるPhialocephala fortiniiの培養濾液より、8-hydroxy-6-methoxy-3,7-dimethyl-1H-isochromen-1-oneと決定した化学構造新規な化合物の取得に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要の実績に示す項目Aに関しては、1次元、および2次元NMRおよび質量分析により、(2R,3S,4S,5R)-2-ethoxy-2,5-bis(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-3,4-diolを単離しており、当該の菌が感染した植物で本化合物が蓄積しているかを検討するための内部標準物質、(2R,3S,4S,5R)-2-ethoxy-2,5-bis(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-3,4-diolのエトキシ基がCD3O-となった化合物の合成に成功している。項目C】については、共生菌の共生を手助けする植物ホルモンとしてアブシシン酸を想定しており、本ホルモンにTGA7遺伝子が活性化され、植物の防御応答を弱めていると考えられた。項目D】については、P. fortiniiの培養濾液より、8-hydroxy-6-methoxy-3,7-dimethyl-1H-isochromen-1-oneを単離しており、1次元、および2次元NMRおよび質量分析の結果から構造を決定した。文献情報を確認したところ、論文未掲載の化合物であった。また、本化合物や他の代謝産物を効率よく単離するために培養条件を検討し、菌の生育に関しては、米をオートクレーブしたものが、今のところ最適であると見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
項目Aに関しては、(2R,3S,4S,5R)-2-ethoxy-2,5-bis(hydroxymethyl)tetrahydrofuran-3,4-diolの合成や、当該の化合物の蓄積量を分析できる内部標準物質の取得に成功していることから、Veronaeopsis simplexが共生した植物での蓄積量や植物に与える影響を観察する。また、他に有用な化合物を取得できないか、P. fortiniiと並行して、培養濾液からの活性化合物の単離を試みる。更にはハクサイのHeteroconium chaetosniranikaからの活性化合物の単離生成に着手する。上記の研究を進め、項目B】に供する化合物を増やしていきたい。項目C】については、共生菌の感染を促進するセオブロキシドの作用から、ABAの関与を考えた。これを元にTGA7遺伝子がKeyとなる遺伝子と想定していることから、変異体の表現型を観察するとともに、アグロバクテリウムを用いた、過剰変異株を作成し、共生菌の感染がより促進され得るかを一番の山場として、研究を進める。研究成果の社会実装に関しては、候補の化合物として、Lasiodiplodia theobromaeの培養濾液より、比較的多量に単離できるセオブロキシドを候補の化合物としていることから、当該の化合物を作用させ、共生菌の感染を促進させた植物がより劣悪環境に対して、抵抗性を示すか検討したい。
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[Journal Article] Jasmonic acid is not a biosynthetic intermediate to produce the pyrethrolone moiety in pyrethrin II.2020
Author(s)
Matsui, R., Takiguchi, K., Kuwata, N., Oki, K., Takahashi, K., Matsuda, K., and Matsuura, H
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 10
Pages: 6366-6377
DOI
Peer Reviewed / Open Access