2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of novel itch transmission pathway and development of seed compounds for treating itch
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
20H04763
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
沓村 憲樹 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (00439241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非天然型モルヒナン / MRGPRX2 / MRGPRB2 / 投与経路 / 掻痒関連行動 / TAN-67 / ナルフラフィン / オピオイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アレルギー性の炎症や痒みに関与すると報告されているオーファン受容体Mas関連Gタンパク質共役受容体(MRGPRs)、特にヒトのX2に作用する化学コミュニケーション分子の創製、および、それを利用した受容体周辺マシーナリーの解明である。 初年度はin vitroの評価系を構築し、研究開始直後に見出した、マウスに対して顕著な掻痒関連行動を誘発する非天然型モルヒナン化合物の誘導体に対して構造活性相関研究を実施する予定であった。しかし、昨今の社会情勢の影響もあり細胞や実験器具の入手が遅れ、本提案研究も計画通りに進まなかった。 そのため予定を少し変更し、(評価を待たず)いくつかの非天然型モルヒナン誘導体の合成を行った。また、我々は当初、本研究の鍵化合物の非天然型モルヒナン誘導体のin vivo評価をマウスの髄腔内投与実験で行っていたが、投与方法を皮内投与に変更しても投与量依存的にマウスの引っ掻き行動の回数が増加することを確認した。非天然型モルヒナン化合物を髄腔内投与で評価していた理由は、20年前、その化合物創製の分子基盤となった(+)-TAN-67を髄腔内投与することで評価していたためである。しかし、MRGPRX2が多く存在するのは抹消の肥満細胞であると報告されていることから、今回、初めて我々の非天然型モルヒナン化合物をマウスに皮内投与した。さらにこれまでは、噛む、引っ掻く、舐めるといった三種の掻痒関連行動回数をカウントしていたが、皮内投与においては"痛み"等の他の行動要因と明確に区別する目的で引っ掻き行動の回数のみをカウントした。一方、痒みを抑える上市薬ナルフラフィン(商品名:レミッチ)を皮下投与することで、その引っ掻き行動回数を減弱させることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画で予定していた構造活性相関研究は、in vitroの評価系の構築が遅れているため実施出来なかったことから、進捗状況は「やや遅れている」とした。しかし、非天然型モルヒナン化合物の誘導体合成は勿論だが、鍵化合物の皮内投与によるin vivo評価や止痒薬ナルフラフィンの皮下投与による拮抗実験は研究全体を考慮すると必要な研究であり、しかも有意差のついた期待通りの結果を得ることが出来たことは、非常に意義のある結果であったと考えている。 またin vitro評価については、RothらによるPRESTO-Tango法(Nat. Chem. Biol. 2017, 13, 529.)を採用することが出来なかったため、カルシウムアッセイ法で評価を行おうと何度も細胞培養から含めて評価系の構築に注力した。しかし、再現性が得られない等の問題から自らの手でカルシウムアッセイを実施することを断念することとした。現在は研究協力者にヒトのMRGPRX2およびマウスのMRGPRB2のin vitro評価を実施して頂いており、予備的な研究では妥当な結果を得ることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず現在までの成果、特に昨年12月に開催された第2回領域リトリートにて報告した、MRGPRに選択的作動活性を示す非天然型モルヒナン化合物に関する研究内容を早急に論文化する。今年度は以下の研究を行う。 ①先述の研究協力者にin vitroのMRGPRX2およびMRGPRB2の評価を依頼し、非天然型モルヒナン化合物誘導体の構造活性相関研究を実施する。 予備的な研究において、我々の鍵化合物である非天然型モルヒナン化合物、TAN-67、そしてコントロールであるコルチスタチン14は、研究協力者の構築したin vitro評価系、すなわち、ヒトMRGPRX2とマウスMRGPRB2に顕著な作動活性を示した。作動活性の強さとしては、コルチスタチン14>非天然型モルヒナン化合物≒TAN-67であった。しかし、研究計画書にも示したように、コルチスタチン14やTAN-67はほかの受容体にも作用する。そのため今後はこれらの評価系を利用して、非天然型モルヒナン化合物誘導体の構造活性相関研究、さらに、MRGPRs作動活性向上のための構造最適化研究を実施する。特に、同一化合物の評価において、X2とB2の活性の差異には注意をする必要があり、マウスのin vivoの評価と併せて比較、検討を行う計画である。
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