2020 Fiscal Year Annual Research Report
母子間化学コミュニケーションを促進する羊水成分の同定と生理機能の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
20H04768
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
廣田 順二 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (60405339)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 嗅覚 / 嗅覚受容体 / 嗅覚行動 / 天然物リガンド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの嗅覚受容体の機能解析では、主に合成香料ライブラリーを対象に解析がおこなわれてきたが、自然環境中で実際に動物が感じ、化学コミュニケーションに用いる天然の匂い物質はこれらと大きく異なると考えられる。これまでに我々は、「母の匂い」の源の一つである羊水に着目し、羊水中に嗅覚受容体によって感知され特徴的な行動を誘導する匂い物質が存在することを明らかにしてきた。一方、羊水には胎生動物の新生仔が嗜好性を示す匂い物質が存在し、またヒト新生児を含め産まれたばかりの子に安寧効果をもたらすことが報告されている。そこで本研究では、羊水中に含まれる母子間化学コミュニケーションを媒介する匂い分子、とりわけ安寧効果をもたらす匂い成分とその受容体を同定することで、母子間化学コミュニケーションの分子実体を明らかにすることを目的とした。羊水の匂い成分のGC/MS解析から、哺乳動物間で共通する匂い成分として遊離脂肪酸が存在した。このうちの一つに、ガラス玉覆い隠し試験(Marble burying test)で抗不安効果があることを見出した。さらにオープンフィールドテストでの不安行動解析をおこなった結果、有意差はでなかったものの、この匂いを嗅いだマウスの不安様行動が減弱する傾向が見られた。この脂肪酸によって活性化される脳(嗅球)の発火パターンを解析した結果、発火する糸球体は少ないことから、少数の嗅覚受容体がこの物質を受容しているものと予想された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
羊水成分に含まれる脂肪酸の一つには、ガラス玉覆い隠し試験(Marble burying test)で有意に抗不安効果があったが、オープンフィールドテストでの不安行動解析では、不安行動は減弱傾向にあったものの、有意差は認められなかった。そのため、高架式十字迷路等の他の行動解析をおこなう必要がある。また受容体の同定に着手しているが、再構築系でのリガンド応答確認に至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
羊水成分を受容する嗅覚受容体を同定するために、嗅覚受容体のmRNAレベルが長時間のリガンド暴露によって減少する現象を利用した受容体同定法、DREAM法(Deorphanization of receptors based on expression alterations in mRNA levels technique)を用いた解析をおこなう。
|
Research Products
(1 results)