2020 Fiscal Year Annual Research Report
化学シグナル伝達における分子内ネットワークの理解とアロステリック制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
20H04783
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 栄夫 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (60265717)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NMR / アロステリック制御 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット由来グルタミン酸受容体AMPARのリガンド結合ドメイン(LBD)を研究対象とし、そのアロステリック効果に関わる分子内構造ネットワークを解明するための研究を推進した。具体的には、NMR検出感度の高い側鎖メチル基を有するアミノ酸(Ile, Leu, Met, Val)をプローブとして選択し、各アミノ酸残基を構造的変化が小さいアミノ酸に置換した変異体(例えばIle→Leu等)を複数作製する。側鎖の構造を僅かに変化させる保存的変異が LBD に誘起する微小な摂動は、静的な分子構造を大きく変化させなくても、当該残基を含む分子内ネットワークが構築されている構造領域の動的構造に影響を与えることがあれば、化学シフト変化として NMR を用いて検出することが可能であると考えられる。一方、変異導入残基と近傍の残基との相互作用が希薄で、当該残基が構造的に孤立している場合は、保存的変異による影響は周囲に及びにくく、化学シフト変化は変異した残基局所に限定的に観測されると考えられる。今年度は10種の保存的変異体を作製、NMR試料調製を行い、変異に伴う化学シフト摂動データを取得した。現時点での素データから、変異部位により化学シフト摂動を受ける領域の大小に差が見られ、想定しているような構造ネットワークの存在がNMRにより検出できる可能性が示された。次年度は、さらなる保存的変異体の作製・データ取得を行うとともに、得られたデータを相関解析により統合することで、構造ネットワークの検出を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AMPAR-LBDにおける、保存的点変異体を活用したNMR比較解析により、想定しているような構造ネットワークが検出できる可能性が示されたことから、おおむね順調に進展していると考える。例えば、M414L変異では、変異部位近傍残基に対する限定的な化学シフト変化が観測されたのに対し、リガンド結合部位近傍のM503L変異では隣接するlobeにいたる、広い領域における化学シフト変化が検出されたことから、リガンド結合部位を含む広範な構造ネットワークの存在が示唆されてきた。次年度は、統計解析をするうえで十分となるデータを取得し、統合した結論を導き出す。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、得られたデータをもとにした統計的な解析を推進するため、さらに10種以上の変異体を作製し、NMRデータを取得することを計画している。また得られた結果を相関解析するためのソフトウェアの導入等も進めている。 また、AMPARのアロステリック調節薬は、LBD二量体界面に結合し、そのドメイン間相互作用を増強することで、チャネルの不活性化を抑制する、すなわち正のアロステリック効果を示すことが知られている。このアロステリック効果と、上記の研究により解明する構造ネットワークの関係性を明らかにするため、これまでにAMPAR-LBDの二量体化促進が期待されるL483Y変異体の作製を行い、その二量体形成能の確認を行った。次年度、そのNMR解析を進める。
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