2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the functions of quadruplex nucleic acids by integrative molecular profiling of chemical signals
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
20H04789
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
清宮 啓之 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 部長 (50280623)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グアニン四重鎖 / テロメア / 天然化合物 / バイオプローブ / オミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)天然G4リガンドであるテロメスタチンおよびこれと母核構造が異なる合成G4リガンドPhen-DC3をがん細胞に処理し、G4の安定化に伴う細胞内応答パターンを包括的に捉えた多層データベースを構築・拡充した。これらのデータを対象に統合的分子プロファイリング解析を行い、G4の安定化に伴って特異的に発現変動する遺伝子・タンパク質群を同定した。これらのうち、タンパク質コード領域にG4形成配列が存在する遺伝子のin vitro転写・翻訳系を構築した。対照として、コード領域にG4形成配列を含まない遺伝子についても同系を構築した。これらを用いてタンパク質の産生効率を調べたところ、mRNA分子内に形成されるG4はタンパク質への翻訳を負に制御すること、G4リガンド処理によってこの翻訳効率がさらに低下することが明らかとなった。これらのことから、遺伝子領域内のG4動態、すなわちG4構造の形成と解消はタンパク質の翻訳効率を調節している可能性が示唆された。
(2)テロメスタチン誘導体類の大環状骨格から分岐した側鎖部分にアジド基を導入し、これと蛍光標識アルキン化合物CO-1のクリック反応を利用することで、テロメスタチン誘導体類の細胞内分布を可視化するライブセルイメージング技術を確立した。本法は生理活性物質の細胞内分布を観察するうえで有用であると考えられた。
(3)我々はこれまでに、テロメアが長い腫瘍ではテロメア非コードRNA由来のG4がインターフェロン標的遺伝子群(interferon-stimulated genes: ISGs)の発現を抑制することを報告してきた。今年度はこれを受け、ISGsの発現に寄与するG4結合タンパク質SF3B2を同定した。Phen-DC3はSF3B2とG4の結合を阻害し、ISGsの発現を亢進させた。G4はSF3B2に結合することでISGsの発現を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の予定通り、G4リガンドによって発現が変動する遺伝子・タンパク質群を選別した上で、G4が直接の翻訳調節エレメントとして機能する遺伝子を同定することが出来た。今回の結果は特に、G4の存在そのものが翻訳の負の制御因子として定常的に機能することを示しており、これを解消する細胞内因子としてRNA G4ヘリカーゼなどの重要性が示唆された。一方、これまでの解析ではG4リガンドの細胞内分布を考慮に入れていなかったが、今回、テロメスタチン誘導体類の細胞内分布を可視化するライブセルイメージング技術を確立することが出来た。その効果として、これらのG4リガンドの細胞内局在が明らかとなり、同リガンドが細胞の核内でDNA由来のG4に作用するのみならず、細胞質でRNA由来のG4に対して作用しうることが支持された。なお、テロメスタチン誘導体類の可視化にあたり、側鎖部分に導入したアジド基は、同誘導体類のG4安定化活性に影響を与えないことは確認済みである。今年度はこれらの結果を踏まえてさらに、G4が具体的にどのような細胞内因子と相互作用しているかを明らかにするため、G4結合タンパク質のLC-MS/MS解析を実施し、上述のSF3B2の他、様々なG4結合タンパク質を網羅的に同定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
G4が転写もしくは翻訳の調節エレメントとして機能する遺伝子群の生理的意義を明らかにしたい。まず、G4リガンドの直接の標的であることが確認された遺伝子群について、RNA干渉法もしくはCRISPR/Cas9システムを用いて発現を枯渇もしくは欠失させたがん細胞株を樹立する。この細胞株の基本形質(増殖速度・形態変化やインフォマティクス解析で明らかにされた細胞内シグナル伝達経路の変動など)などを観察する予定である。これらの複合的検討により、当該遺伝子ひいては同遺伝子上で形成されるG4構造が、細胞の形質にどのような影響を与えているのかを明らかにしたい。
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Research Products
(17 results)