2020 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜に会合する化学コミュニケーション分子の機能解明と計算分子設計技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
20H04791
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
齋藤 大明 北陸大学, 薬学部, 准教授 (40506820)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / 分子モデリング / 自由エネルギー / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では計算科学の方法を用いて,化合物の脂質膜への結合・透過・離脱能を高精度に予測する手法を開発する.さらに,計算データをもとにした機械学習モデルを開発することで,新規の化合物の設計・合成・評価を加速させるための計算基盤を創る.具体的には,1. 脂質の疎水鎖の長さや不飽和度を変更した脂質膜に標的化合物を挿入した分子動力学(MD)計算を行い,膜内での分子の動的構造や相互作用特性の詳細な解析を行う.2. 高速・高精度の自由エネルギー計算法を開発し,化合物の膜への会合・透過・離脱の起こりやすさを定量的に評価する計算技術を確立する.開発した自由エネルギー計算法を用いて,3.脂質や化合物の分子構成変化に対する膜への結合能を比較・評価する.1-3の課題研究によって得られた計算データを集積・解析し,新規の化合物開発のための分子設計指針を与える.実際にモデリングした化合物の会合能をシミュレーションや機械学習モデルにより評価・最適化し,4. 新規化合物の合成・評価の実験を行う.また、本申請研究は,脂質膜に会合する化合物やペプチドの分子設計を計算科学の方法を用いて提案し,さらにこれを実験研究者と共に検証する.単に計算科学による構造や相互作用の解析だけにとどまらず,実験研究者と共同で研究を進める体制を構築し,計算科学技術によって評価・最適化された化合物・ペプチドの合成・評価実験を行う挑戦的試みである.開発した計算手法,プロトコル,予測モデルは化合物・ペプチドの合成や実験研究を加速させる基盤技術となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、実験により合成・評価されているヘロナミド類の脂質膜における分子動力学(MD)シミュレーションを実施した。ヘロナミドC, やA単体の脂質膜におけるMD計算に加えて、共同研究者が合成したヘロナミド類の脂質膜におけるMD計算を実施した。各々の化合物の膜内における結合位置や分子配向の違いを詳細に解析し、ヘロナミドの膜内における構造や凝集特性の違いについて解析し、公開シンポジウムにて成果発表を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘロナミドA, B, CおよびヘロナミドCの構造異性体、コレステロールやエゴステロールのMD計算は終了しており、現在は各々の系における膜内の構造や安定性に関する解析を進めている。それぞれヘロナミドの分子構造の違いに起因する、膜内構造や安定性の違いがこれら解析計算により明らかとなってきている。今後はヘロナミドの膜内濃度変化に対する膜構造や相互作用、膜内における凝集特性の違いについても解析し、これら結果と実験との比較検討を行う予定である。
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