2020 Fiscal Year Annual Research Report
有機触媒を用いたドミノ反応によるキラル有用化合物の迅速合成
Publicly Offered Research
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
20H04801
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 雄二郎 東北大学, 理学研究科, 教授 (00198863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドミノ反応 / 有機触媒 / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドミノ反応は同一容器内で複数の反応を順次行うために、中間体を単離する必要がなく、反応間における精製工程を省略するので、操作時間の短縮、廃溶媒の低減といった利点を有する、環境調和型の反応である。これまでの研究で、2つのアミン触媒を合わせ用いるハイブリッド型触媒により、これまで困難とされていたケトン/不飽和アルデヒド間の不斉触媒マイケル反応が高い不斉収率で進行することを見出している。今回、この知見をさらに発展させ、有機触媒を用いた不斉マイケル反応とドミノ反応を組み合わせることにより、重要な光学活性合成中間体を、環調和型手法で効率的に合成する事を目的とする。また開発した手法を、強力な生物活性を有する天然物の全合成に応用し、その有用性を明らかにする。 具体的にはドミノ マイケル/マイケル反応により、形式的な[3+2]付加環化反応を実現し、光学活性な置換シクロペンタン骨格の構築法を確立する。シクロペンタン骨格を有する生物活性天然物は多くの化合物が知られているが、中でもプロスタグランジンは超強力な生物活性を有する化合物の一群である。今回、見出した反応をプロスタグランジンの合成に展開する。 一方、ビシクロ[3.3.0]オクタン骨格を有する多くの天然物及び医薬品が知られている。そこで、ドミノ マイケル/マイケル反応を利用して、ビシクロ[3.3.0]オクタン骨格の構築法の開発を行う。置換ビシクロ[3.3.0]オクタンの光学活性体の合成反応の最適化の後、置換ビシクロ[3.3.0]オクタンの光学活性体の一般性を検討する。得られた置換ビシクロ[3.3.0]オクタンから、プロスタサイクリン誘導体の一つであるイソカルバサイクリンの短工程合成を実現する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は既に、diphenylprolinol silyl etherとピロリジンを合わせ用いる触媒系が、ケトンと不飽和アルデヒド間の不斉触媒マイケル反応の優れた活性化剤となる事を明らかにしている。ケトンとしてethyl 4-oxo-2-pentenoateを用い、β-シリルプロペナールと作用させれば、マイケル反応に引き続き、分子内マイケル反応が連続的に進行し、置換シクロペンタノン誘導体が得られると考えた。検討を行った結果、触媒としてdiphenylprolinol silyl etherを用いるだけで、望みの反応が進行し、高いジアステレオ、エナンチオ選択性で目的物が得られた。得られた化合物から、還元反応、ラクトン化、玉尾―フレミング反応を行い、5ポットでのCoreyラクトン合成に成功した。さらに、ポットエコノミーの概念に基づき、反応全体の最適化を行ったところ、ワンポット、152分での合成に成功した。Coreyラクトンはプロスタグランジンの重要中間体であり、従来法に比べて、はるかに効率的な合成法である。さらに、ドミノ マイケル/マイケル反応を鍵反応として、緑内障治療薬として臨床で使用されているラタノプロストの効率的な合成を達成することができた。 一方、PGI2の類縁体であるクリンプロストは血小板凝縮阻害作用、血管拡張作用を示す化合物でビシクロ[3.3.0]オクテンを基本骨格とする。先に見出したドミノ マイケル/マイケル反応を利用して、置換シクロペンタノンを構築後、分子内Horner-Wadsworth-Emmons (HWE)反応によりビシクロ[3.3.0]オクテノンを合成した。鈴木―宮浦反応、HWE反応により、2つの側鎖を導入し、玉尾―フレミング反応、立体選択的ケトンの還元等を行い、クリンプロストの合成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は既に、diphenylprolinol silyl ether 触媒とピロリジンを合わせ用いるハイブリッド系触媒によるケトンとα,β-不飽和アルデヒドとの不斉触媒マイケル反応を確立している。この触媒をドミノ反応に適用することで、有用化合物が迅速に、また高い不斉収率で合成できるものと考え、検討を行う。 これまで求核剤としてケトンを用いてきたが、ケトンに代わり、ケトンとマロノニトリルから合成できるプロパンジニトリル誘導体を用いることを検討する。これは、ケトンよりも酸性度の高いプロトンを有しており、マイケル反応の優れた求核剤として作用することが期待できる。α,β-不飽和アルデヒドと反応すれば、ドミノ マイケル/アルドール縮合反応(形式的な[4+2]付加環化反応)が進行し、一挙にシクロヘキセン骨格が得られると考えた。生成物中のマロノニトリル部位は、我々の開発した酸素を用いる酸化的手法によりアシルシアニドを発生させることができ、他の官能基に変換可能であると期待される。一方、シクロヘキサン骨格を有する多くの生物活性天然有機化合物が知られている。反応の一般性の確立後、本反応を鍵反応として、興味ある生物活性を有する天然物の全合成に展開する。その際、我々の提唱しているポットエコノミーの概念に基づき、できるだけ工程数を少なくした合成ルートの構築を目指す。 また、ドミノ反応のさらなる展開として、分子内にケトン部位を2つ有するシクロヘキサ-1,4-ジオンを求核剤として用いる。diphenylprolinol silyl ether 触媒存在下、α,β-不飽和アルデヒドに作用させると、ケトンからの不斉触媒マイケル反応、分子内の他のケトン部位への付加反応が連続的に進行することにより、多環性化合物の生成が期待できる。得られた化合物は複数の官能基を有しており、重要な合成中間体となることが期待される。
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[Presentation] Time Economy in Total Synthesis2020
Author(s)
Yujiro Hayashi
Organizer
7th Annual Convertion of Chemists (ACC), Indian Chemical Society (ICS), Organic & Bio-Chemistry Section, IISER Kolkata, India (on line) (plenary)
Int'l Joint Research / Invited