2020 Fiscal Year Annual Research Report
有機ラジカルと無機酸化物の表面ハイブリッド化による選択的アルカン脱水素反応の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
20H04803
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 雄杰 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00761412)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルカン / 脱水素 / 不均一系触媒 / 均一系触媒 / ハイブリッド触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では不均一系と均一系触媒のハイブリッド化による高難度アルカン脱水素反応の開発を目的とする。本年度は、エチルベンゼンをモデル基質とし、触媒系の最適化を行った。得られた結果を下記に示す。 均一系有機ラジカル触媒と遷移金属酸化物をハイブリッド化することにより、空気中温和な条件下でエチルベンゼンの脱水素反応が進行し、選択的にスチレンが得られた。一般的に、酸素を酸化剤とするエチルベンゼンの酸化反応においては、スチレンと酸素の反応が優先し、アセトフェノンを選択的に与えるが、本ハイブリッド触媒系を用いることによりアセトフェノンがほとんど生成せずスチレンが選択的に得られた。また、本触媒系はエチルベンゼンのみならず、置換シクロヘキセン類の脱水素芳香環形成反応も促進し、対応する置換アレーンが高い収率で得られた。シクロヘキセン類はジエンとジエノフィルのDiels-Alder反応により容易に合成できることから、本脱水素反応の開発により、ジエンとジエノフィルから置換アレーンを合成する新たな合成手法が生まれる可能性がある。本年度の研究により得られた結果は、均一系或いは不均一系触媒のみでは困難であった反応を均一系と不均一系のハイブリッド化により達成可能であることを示すものであり、今後の触媒設計に大きく寄与するであろうと考えている。次年度は反応機構の検討を行い、得られた結果をまとめて論文発表を行う予定である。また、本年度はA01班の宍戸教授との共同研究により、反応機構の検討にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り、有機ラジカルと遷移金属酸化物のハイブリッド触媒系を網羅的に検討し、エチルベンゼンからスチレンへの脱水素反応に有効な触媒系を見出すことができた。初期目的は達成したものの、触媒活性はまだ低く、今後の課題として残っている。これについては今後反応機構を検討することにより、触媒の改良を行う予定である。また、本新学術領域への参画を契機に、本研究にとらわれず、不均一系触媒を用いた幅広い液相有機合成反応の反応機構についてA01班の宍戸教授と共同研究を行うことができたことは大きな収穫であったと考えている。実際、不均一系触媒によるフェノール類の液相加水素分解反応の反応機構について、宍戸教授と共同研究を行い、得られた成果を英国科学誌「Nature Catalysis」に発表し、本誌の表紙を飾ることになった。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は令和2年度に得られた知見をベースに、アルカンからアルケンへの選択的脱水素反応の更なる効率向上に向け、有機ラジカルおよび遷移金属酸化物のチューニングを行う。また、領域メンバーとの共同研究により、有機ラジカルおよび遷移金属酸化物の役割を明確にするために、反応機構を詳細に検討する。これにより触媒系の活性向上につなげると同時に、単純アルカンの脱水素反応も視野に入れて研究を進める予定である。また、当初の研究計画には入っていないものの、酸素を酸化剤とした熱反応で得られた知見を電解合成に応用することにより、電気エネルギーを利用した酸素フリーな条件下でのアルカン脱水素反応についても検討する予定である。
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