2020 Fiscal Year Annual Research Report
Multiple Controls of Vinyl Polymer via Hybrid Precision Polymerization
Publicly Offered Research
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
20H04809
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上垣外 正己 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00273475)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラジカル重合 / カチオン重合 / リビング重合 / 立体特異性重合 / モノマー配列 / ビニルポリマー / 多重構造制御 / レドックス触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然高分子は、タンパク質などにみられるように、その制御された一次構造に基づき特異な高次構造を形成し、独自の優れた機能を示す。一方、合成高分子は、さまざまなモノマーを原料として用いることで、特異な機能や性能を発揮し、工業製品として広く用いられている。本研究では、ビニルモノマーの重合において、分子量、立体構造、モノマー配列を制御する新たな重合系を見出し、これらを組み合わせたハイブリッド精密重合系によりビニルポリマーの多重構造制御を行い、新規機能性材料の開発へと展開することを目的としている。 植物由来化合物から誘導されるビニル化合物として、植物由来テルペノイドから新規エキソメチレン型環状ジエンを合成し、ルイス酸触媒によりリビングカチオン重合を達成し、ポリマーの分子量制御が可能となることを見出した。さらに、位置選択性と立体選択性の高度な制御も達成し、分子量と立体構造が多重に制御された新規バイオベースビニルポリマーを得た。領域内の共同研究により、ポリマー中の環状オレフィン部位の水素化にも成功し、高耐熱性のキラルシクロオレフィンポリマーの合成も達成した。 α-トリフルオロメチルアクリル酸エステルとビニルエーテルのラジカル共重合に関して、さまざまなビニルエーテルを用いることで、その置換基に違いにより、1:1から1:2の選択的な生長反応が進行することを見出した。さらに、適切なチオエステル化合物を用いたRAFT重合により、1:2のモノマー配列に加え、分子量と末端構造までが精密かつ多重に制御されたビニルポリマーの合成が可能となることを明らかとした。 ビニルエーテルのカチオン重合においては、高い酸化電位を有するアクリジニウム塩を光レドックス触媒として用い、チオエステルと組み合わせることで、光応答型のリビングカチオン重合を見出し、分子量の制御されたポリマーの合成が可能となることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ビニルモノマーのラジカル重合やカチオン重合において、触媒、添加物、溶媒、モノマーの構造などを設計し、分子量、立体構造、モノマー配列を制御する新たな重合系を見出し、これらを巧みに組み合わせたハイブリッド精密重合系を構築し、ビニルポリマーにおける多重構造制御を達成すると共に、その構造に基づく機能性材料の開発へと展開することを目的としている。 本年度は、植物由来ビニル化合物としてエキソメチレン型環状ジエンに対して、位置選択性に加え立体選択性のリビングカチオン重合が進行することを見出した。とくに、立体選択性リビングカチオン重合により得られたポリマーが結晶性を示すと共に、その水素化によりキラルなシクロオレフィンポリマーが得られたことは予期せぬ結果である。ポリマーの水素化は領域内の共同研究機関の強力な連携によって達成され、これらの研究成果を報告した2報の論文は、ACS Macro Lett.誌とPolym. Chem.誌に掲載され、Hot Paperにも選ばれ高い評価を得た。また、ビニルエーテルとのブロックポリマーはミクロ相分離構造を示すことは、薄膜のAFM解析を専門とするフランスの研究機関との共同研究により明らかとなった。 α-トリフルオロメチルアクリル酸エステルとビニルエーテルのラジカル共重合に関しても、ビニルエーテルの置換基によりこれまで以上の非常に高い1:2選択性の高いラジカル共重合を達成し、RAFT試薬によっては、開始末端と停止末端までも精密に制御された構造となることを見出したのも予期せぬ結果である。 また、ビニルエーテルのカチオン重合においては、アクリジニウム塩をチオエステルと組み合わせることで、光応答型のリビングカチオン重合を見出し、さらなる展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
アクリジニウム塩を用いた重合に関しては、光応答型のリビングカチオン重合に加え、同一触媒によるリビングラジカル重合も検討する。リビングラジカル重合に関しては、種々のアクリジニウム塩をシリルケテンアセタールに対して用いることで、ラジカルカチオン種を経由したメゾリティックな開裂により炭素ラジカルを生成させることで、メタクリル酸エスエルなどのリビングラジカル重合の可能性を検討する。とくにアクリジニウム塩の構造と活性の相関に関しては、領域内の研究機関の協力を仰ぎ、より精密な重合反応制御を達成する。 また、α-トリフルオロメチルアクリル酸エステルとビニルエーテルのラジカル共重合に関しては、領域内の研究機関の協力を仰ぎ、1:2の選択的な生長反応が進行する重合機構の解明に関して計算化学を用いた取り組みも展開する。 植物由来化合物から誘導される特有な骨格を有するビニル化合物として、テルペノイドから誘導されるエキソメチレン型環状ビニルケトン、糖類由来のイソソルバイドの脱水反応より得られる二環式骨格を有するビニルエーテル、グリセロールから誘導される環状イソプロペニルエーテルなどに対して、分子量、モノマー配列、立体構造の多重構造制御に関して、ラジカル重合やカチオン重合などを用いて検討する。 以上、ハイブリッド精密重合系を開発することで、ビニルポリマーの多重構造制御を行い、新規機能性材料の開発へと展開する。
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Research Products
(21 results)