2020 Fiscal Year Annual Research Report
Nutrition signals and gene expression networks to launch larval development in nematodes
Publicly Offered Research
Project Area | Transomic Analysis of Metabolic Adaptation |
Project/Area Number |
20H04839
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
黒柳 秀人 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30323702)
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Project Period (FY) |
2020-10-30 – 2022-03-31
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Keywords | 線虫 / 代謝酵素 / mRNA / 遺伝子発現 / フィードバック制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、線虫のL1期幼虫が様々な種類の食餌の摂食により代謝酵素の遺伝子発現を柔軟に変動させて体内代謝環境を整え、幼虫期発生プログラムを開始する運命決定に至る過程を代謝アダプテーションとして捉え、線虫の遺伝子発現応答を明らかにすることで、幼虫期発生プログラムの開始に必須の遺伝子発現の時期と制御経路の特定を目指している。
線虫のメチオニン回路の代謝酵素であるS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)合成酵素をコードするsams-3, sams-4, sams-5遺伝子は孵化後の食餌によりmRNAの発現が誘導されるが、一方で、選択的スプライシングパターンも変化し、通常の大腸菌食では、産生されるのはフレームシフトにより酵素を産生しないスプライスバリアントであった。一方、sams遺伝子の変異体では、酵素を産生するバリアントの割合が増加した。そこで、このmRNAの選択的スプライシングの動的変化によるSAM合成酵素量のフィードバック制御機構の解明に取り組み、酵素産生型バリアントのための3’スプライス部位の保存されたAGのアデニンの6位のアミノ基がメチル化されるm6A修飾を受けることを明らかにし、さらにそれが機能未知であったメチル化酵素METT-10によって行われていることを、試験管内および変異体を用いた解析で明らかにした。スプライス部位そのものがm6A修飾を受けることでスプライシングパターンが変化することを明らかにしたのはすべての生物を通じて世界で初めてであり、この成果をEMBO Journal誌に発表し(2021年6月)、東京医科歯科大学からプレスリリースした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、孵化後の食餌の種類の違いにより誘導される遺伝子発現の違いを鋭敏に反映するために、代謝標識による新生RNAの標識と濃縮を行ってからライブラリ調製を行いRNA-seq解析を行う予定であった。また、メタボローム解析についても実験条件を検討する予定であった。しかし、代表者の異動およびそれに伴う実験装置の移転とその後の実験系の立ち上げに時間を要したこともあり、結果が出るには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな餌で誘導される新生mRNAを生成してRNA-seq解析を行い、代謝アダプテーションや幼虫期発生プログラムの遂行に関わる遺伝子発現を明らかにする。また、それらのうちで、タンパク質合成を必要とする遺伝子群と必要としない遺伝子群を明らかにすることにより、発生プログラムの開始に関わる経路を探索する。これらの遺伝子発現とメタボローム解析の結果を組み合わせることで、幼虫期発生プログラムの開始の鍵となる食餌側の栄養素や線虫側の遺伝子発現を明らかにする。
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