2020 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of specificity: theory and a test using the plant self-incompatibility system
Publicly Offered Research
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
20H04856
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土松 隆志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60740107)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 集団ゲノミクス / 生殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
共進化する生物同士にはしばしば、特定の相手としか相互作用しないというパートナー選択の特異性がみられる。このような特異性を担う分子的実体は受容体とリガンドであることが多いが、新しい特異性、すなわち「新しい受容体とリガンドのセット」はどのように進化するのかという問題が以前から指摘されていた。受容体とリガンドのいずれかが変化すれば互いに認識されず、特異性は崩れてしまう。このような中間状態を乗り越え新しい特異性はどう進化するのか。本研究では、自家受精を防ぐ自己認識機構である植物の自家不和合性を対象にこの問題に取り組んできた。 これまでに、胞子体型自家不和合性を想定した数理モデル解析から、新規S対立遺伝子の進化しやすさと特異性ゆらぎ、S対立遺伝子の優劣性との関係などを明らかにしてきた。現在、この数理モデルの状況を再現する形質転換実験を進めている。シロイヌナズナに近縁の自家不和合性種ハクサンハタザオの野生植物集団で発見されたS対立遺伝子内のアミノ酸置換を人工的に作成、シロイヌナズナに遺伝子導入し、自家不和合性の活性の観点から特異性のゆらぎを定量している。また、胞子体型自家不和合性だけでなく、ナス科、バラ科などで一般的にみられる配偶体型自家不和合性システムについても、ロングリードシークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析等から、野生植物集団でのS対立遺伝子の変異の把握を進めているほか、数理モデル化を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の異動とコロナ禍による活動制限が重なったこともあり、とくに胞子体型自家不和合性モデルの機能解析実験にやや遅れが出ている。一方、配偶体型自家不和合性システムの野生植物集団でのS対立遺伝子の同定は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
野生集団でみつかった変異が花粉管伸長などの表現型やタンパク質相互作用に与える影響を測定することで、S対立遺伝子の特異性ゆらぎを定量し、すでに作成している数理モデルへフィードバックする。また、野生集団のデータが得られつつあるナス科配偶体型自家不和合性システムについてもモデルの検討を行ない、一般的な自家不和合性進化モデルの構築を目指す。
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Research Products
(12 results)