2020 Fiscal Year Annual Research Report
実験生態系の摂動と継代による生態系の揺らぎ応答関係の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
20H04868
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細田 一史 大阪大学, 国際共創大学院学位プログラム推進機構, 招へい研究員 (30515565)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 揺らぎ応答理論 / 実験生態系 / 微生物 / 進化実験 / 摂動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では12種の微生物による実験生態系を用いて生態系の揺らぎ応答関係を解明する。具体的には本研究全体として下記5項目および総合解析を行う。(1)安定な実験生態系の構築:12種から開始して半年間で5種以上が共存し続ける10通りを準備。(2)温度変化を加える(摂動実験):10通り各々を32複製して温度上昇による系の変化を計測。(3)長期変化の計測(進化実験):同じく32複製を半年間継代する。温度変化の有無は両方行う。(4)揺らぎ応答関係の解析:32複製の揺らぎと摂動実験や進化実験の変化の方向の関係を解析。(5)生態系内の生物の進化の解析:代表生物として大腸菌を単離し、ゲノムと表現型の変化を解析。このうち、本年度には(1)~(3)について、以下のような結果を得た。 (1) 安定(疑似安定)な実験生態系の構築:12種の生物種から開始して、生産者・分解者・消費者を含む3~5種生物が半年間安定に共存する生態系を10通り選択した。これに加えて、2種しか生存しなかった系も比較のために用意した。 (2) 温度変化による生態系の変化を計測(摂動実験):上記10通りの生態系それぞれについて、32個に複製し、系への外力として温度変化(2、5、10℃上昇の3通り)を与えた。結果、どの生態系も5℃以下では有意な変化は見られなかったが、10℃では2種生物しかいない生態系以外では揺らぎ応答関係を解析可能な変化が見られた。 (3) 長期変化の計測(進化実験):上記10通りの生態系それぞれについて、同じく32複製に関して半年程度の継代培養を行った。摂動実験同様に、2種生物しかいない生態系以外では、揺らぎ応答関係を解析可能な変化が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の通りの結果を得ているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、研究実績の概要にある(4)~(5)について、以下のように研究を推進する。 (4)揺らぎ応答関係の解析:2020年度の実験結果から、摂動実験でも進化実験でも、揺らぎによって観察された制約と同じ方向に変化した生態系と、そうでない生態系があることがわかっている。これらがなぜなのかを解明することで、理解を得る。具体的には、まず生態系の群集動態を記述する数理モデルを作成し、この制約の有無を再現する。これは既におおよそできている。その上で、これがなぜなのか、より一般的に、制約が成立する場合としない場合の違いは何か、ということを解明する。 (5)生態系内の生物の進化の解析:2020年度の進化実験により、進化によって有意に表現型が変化したと示唆される生物種を単離し、凍結保存することができている。よって、これを祖先株と比較する。またゲノム配列の変化を解析する。これら各生物種の進化による変化が、(4)においてみられるような生態系全体の変化とどのように結び付けられるか、その解析にも挑戦する。 ※ 機械学習の最適化:これは付加的な項目であるが、本研究のためにも、またこの人工生態系を用いたさらに発展的な研究のためにも、機械学習の最適化を行う。現在、単種培養の顕微鏡画像を教師データとして、深層学習の一種であるYOLOを用いて各生物種の判別が実用可能になっている。しかし例えば別種隣接や高密度時などのケースにおける精度が低いため、背景も含めた模様として認識する手法を加えるなどして、精度向上を試みる。
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Research Products
(8 results)