2021 Fiscal Year Annual Research Report
トランスクリプトームのゆらぎがもたらす新規ニッチへの進出能力
Publicly Offered Research
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
20H04873
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 麻乃 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20722101)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トランスクリプトーム / ゆらぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生物の新規ニッチ進出の制約と方向性を生む機構として、表現型のゆらぎや方向性の違いに着目し、その分子的実態と新規ニッチ進出に果たす具体的な役割を解明する。モデルとしたのは、淡水ニッチへの進出能力が異なるトゲウオ科イトヨ2種である。イトヨは世界各地で海から淡水への進出に成功し、多様化を遂げている。一方、近縁種であるニホンイトヨは淡水域に一切進出していない。私たちの研究から、ニッチ進出能力の高いイトヨは、進出能力の低いニホンイトヨに比べて、淡水域への適応に関わる遺伝子発現のゆらぎが大きいことが示唆された。これは、トランスクリプトームのゆらぎの進化が、淡水ニッチへの進出と適応に寄与していることを示唆している。そこで、本研究では、『トランスクリプトームのゆらぎの差が新規ニッチへの進出・適応能力を規定している』という仮説を立て、このゆらぎの違いを生むゲノム領域/候補変異を同定し、それらが新規ニッチ進出に果たす具体的な役割を実験的、定量的に解析することで、これを検証することを目指した。イトヨとニホンイトヨのトランスクリプトームのゆらぎを定量的に計測するため、同一卵塊から得られた孵化後1ヶ月の幼魚をさまざまな環境条件に曝露し、孵化後8ヶ月までの生存率を確認すると、イトヨはニホンイトヨに比べ、淡水条件下で高い生存率を示した一方で、ニホンイトヨはイトヨに比べ、広い温度条件下で高い生存率を示した。またそれぞれの環境で成長率も異なった。これはイトヨがニホンイトヨに比べて淡水進出能力を持つ一方で、ニホンイトヨはより広い緯度に分布していることと一致しており、新規ニッチ進出能力の制約や方向性が、それぞれの環境応答性と関係することを改めて示してた。今後得られる各組織のRNAseqデータにより、制約や方向性を生む環境応答性の候補遺伝子や、その環境応答性の違いを生むゲノム領域や候補変異を同定する。
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(11 results)