2020 Fiscal Year Annual Research Report
核膜間交流ゾーンにおける分子基盤と生物学的意義の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Toward an integrative understanding of functional zones in organelles |
Project/Area Number |
20H04899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 哲久 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (40581187)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2022-03-31
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Keywords | HSV / 核ラミナ / CRISPRスクリーニング / イメージング解析 / インターラクトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞にとって、核膜は細胞内を二分する極めて重要なオルガネラである。核膜は小胞体の延長である核外膜と、核ラミナに裏打ちされる核内膜とに区別される。核外膜と核内膜は核膜孔を介して接しており、核内膜に存在する蛋白質は核膜孔を介してのみ交換されると、長らく考えられてきた。しかしながら、近年、核膜の中でlamin A/Cによる裏打ちが消失したゾーンにおいて、巨大な構造体が、一旦核内膜から出芽し、核膜間に小胞を形成した後、小胞が核外膜と融合することで、「ウイルスカプシド」や「巨大リボヌクレオチド」といった「核膜孔の直径を上回るサイズの構造体」を細胞質へと輸送する「小胞媒介性核外輸送」が注目されている。現在までに、我々を含むヘルペスウイルス研究者により、この核膜間交流ゾーンの形成には、(i) プロテインキナーゼCによるラミナ構造の崩壊、(ii) ウイルス蛋白質から形成されるNECと呼ばれる複合体による核内膜の湾曲、(iii) ESCRT-IIIによる核内膜の切断の必要性が解明されていた。しかしながら、核膜間に形成された小胞と核外膜が、細胞質へと移動する過程(核膜間に形成される小胞の膜を脱ぎ捨てることから、De-emvelopmentと呼ばれる)における核膜間小胞と核外膜の膜融合機構を司る分子メカニズムはほぼ不明なままであった。昨年度、我々は、NECをbaitとしたインターラクトーム解析により得られた候補分子をCRISPRスクリーニングとイメージング解析を併用したfunctional screeningに供した後、共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡を用いた詳細な解析を実施することで、ウイルスカプシドのDe-envelopmentを司る宿主因子のscreen outに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で目指す大きな目的の1つであるDe-emvelopmentを司る分子メカニズムの解明上、極めて重要となる関連宿主因子をCRISPRスクリーニングとイメージング解析を併用したfunctional screeningによりscreen outに至ったこと、さらに、共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡を用いた詳細な解析を通じてscreen outした宿主因子が、実際にHSVヌクレオカプシドのDe-emvelopmentに関与することを示す知見を得たこと、さらに当該宿主因子の欠損細胞や過剰発煙細胞を樹立し、ウイルス学的解析のみならず細胞生物学的解析に順次、供したところ従来のHSVヌクレオカプシドの小胞媒介性核外輸送により得られた知見と整合性のある結果が得られたことから、同定した宿主因子が実際にDe-emvelopmentを司るという知見がさらにサポートされたと考えられる。また、遺伝性疾患Hutchinson-Gilford Progeria Syndrome(HGPS)の患者由来の線維芽細胞において、「小胞媒介性核外輸送」が認められること、 HGPSの原因SNPを導入した変異LaminA/C(Progerin)の過剰発現によっても、「小胞媒介性核外輸送」が活性化されること等を、国際学術誌に報告できたという観点からも、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度の進捗を活かし、以下の点を集中的に解析する予定である。 ① 植物における知見より、同定したDeenvelopment制御因子あるいはそのホモログ分子が、創薬標的分子として近年、注目されている他の宿主因子と複合体を形成し、特定の活性を示すことが予測されることから、CoIP解析およびPLA解析により、両分子の相互作用の有無を確認する。 ② 同定したDeenvelopment制御因子欠損細胞に、変異型分子を発現させ、HSV感染による小胞媒介性輸送を電子顕微鏡解析することで、予測される特定の活性が、実際に、HSVヌクレオカプシドの小胞媒介性核外輸送に関与するのかを解析する。 ③ 近年、創薬標的分子として注目されている宿主因子に関しても、欠損細胞を樹立し、HSV感染による小胞媒介性輸送を電子顕微鏡を解析する。期待された結果が得られた場合は、低分子化合物を用いた阻害実験を、培養細胞レベル、マウス病態モデルレベルで実施することで、本研究で解析する宿主因子が、抗HSV剤開発の標的分子となりうるのか、そのポテンシャルを評価する。
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Research Products
(10 results)