2020 Fiscal Year Annual Research Report
数理モデリングを用いた選別輸送ゾーンのメカニズムの理解
Publicly Offered Research
Project Area | Toward an integrative understanding of functional zones in organelles |
Project/Area Number |
20H04903
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立川 正志 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (30556882)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生物物理 / オルガネラ / パターン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ERにおいて翻訳された膜タンパク質や分泌タンパク質がゴルジ体へと送られる場所となるER Exit Site(ERES)が、どのように形成されるか、数理モデリングの手法を用いて調べた。前年度の結果より、低分子量Gタンパク質であるSar1-GTPとその活性化因子(GAP)であるSec23/24を中心にした2変数からなる反応拡方程式が適切なパラメタ値でSec23/24が集積する安定なドメインの形成すること、膜の曲率がドメインの安定性に関与することが示されている。本年度はこのモデルを、実際のER形状を持った膜の上で解くシミュレーション手法を開発した。さらにERESで形成された小胞からコートタンパク質(Sec23/24)が離脱するプロセスを、膜の曲率に依存した反応であると仮定してドメインモデル形成モデルを拡張し、シミュレーションをおこなった。この結果、Sec23/24が集積するドメインは、チューブ状膜が分岐する負のガウス曲率(鞍状形態)を持つ部分に集積することを示した。この結果は、実際の細胞で見られている現象と一致している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。本プロジェクト全体の目標はERES形成の、分子反応と膜形態変化を含めた包括的な過程を、物理モデルとして記述することにあるが、本年度はその前半の分子反応のモデルを完成させた。次年度に後半に取り掛かり、このモデルを以前より作成している物理膜シミュレーターへ組み込むことで包括的なモデルが完成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、ER膜上で安定なタンパク質集積ドメインとしてERESを形成する数理モデルを形成している。今後このERESから小胞が形成される過程を、膜形態の変化として表現する物理モデルを構築し、膜シミュレーターを用いてその変形ダイナミクスの再現と解析を目指す。具体的には、ERES形成モデルが示す集積度の変数を膜の曲率を制御するパラメタとして、以前より構築している膜物理シミュレーターへ組み込む。ERES形成モデルではドメインを形成するタンパク質の離脱速度が膜曲率に依存しているため、ドメインが膜の曲率を制御するとする今回の改良とあわせると、フィードバック機構がはたらき、より複雑なダイナミクスを示すことが考えらえる。その複雑なダイナミクスの結果としての安定なERES形成と小胞形成を示す物理条件を推定することで、小胞輸送の初期過程の理解を深めることを目指す。
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Research Products
(1 results)