2020 Fiscal Year Annual Research Report
Sexual spectrum determined by polyallelic sex-determining genes
Publicly Offered Research
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
20H04919
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雅京 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30360572)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 性決定 / 性分化 / 相補性性決定 / ペアレンタルRNAi / SNPs解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
カブラハバチは、ある一遺伝子座がヘテロ接合のとき雌に、ホモ接合の場合は雄となる。このような性決定様式相補性性決定様式(Complementary Sex Determination: CSD)と呼ばれる。カブラハバチのCSDの責任遺伝子は未だ同定されておらず、なぜヘテロ接合の時のみ雌分化が誘導されるのか、その分子機構も一切明らかにされていない。我々はカブラハバチの相補性性決定機構を駆動する分子を明らかにするため、性決定時期におけるトランスクリプトーム解析を行い、雌で特異的に発現するLong-non-coding RNA(lncRNA)を既に同定している。この遺伝子が実際に雌分化に関わるか否かを明らかにするため、ペアレンタルRNAiにより本遺伝子の発現を初期卵の状態からノックダウンし、雌分化に及ぼす影響を調べた。その結果、予想とは異なり雌分化には何ら影響がみられないことが判明した。次に、CSD責任遺伝子を同定するため、兄妹交配を10世代以上繰り返してゲノムを純化した系統を樹立し、理論的にはCSD責任遺伝子座のみヘテロとなるような系統を作製した。これらの系統の雌雄のバルクDNAを全ゲノムシーケンス解析に供試し、雌でのみヘテロとなるSNPsを探索した。まず始めに、タンパク質コード領域において雌ヘテロとなるSNPsをもつ遺伝子を探索したところ、4つの遺伝子が選出された。これらのうち性決定時期に発現することが明らかとなった2つの遺伝子について、我々が独自に開発した完全RNAi(初期胚から成虫期にいたる全てのステージにおいて標的遺伝子の発現をノックダウンさせる方法)によりそれらの発現をノックダウンしたが、性分化に異常は見られなかった。そこで全ゲノムを対象に雌へテロとなるSNPsが密集(1kb内に10箇所以上SNPsが存在)する領域を探索し、4領域を見つけることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定ではカブラハバチの相補性性決定機構の責任遺伝子を同定する予定であったが、それを達成することができなかった。その主要な原因として、性決定時期において性特異的に発現する遺伝子を探索するために実施したトランスクリプトーム解析や、相補性性決定の責任遺伝子を特定するために実施したSNPs解析を担当した博士課程学生が昨年度始めから体調を崩し、週に2日ほどしか研究室に来られなくなってしまったことが上げられる。このため、解析のdepthが浅くなり、なおかつデータの欠落に気付かない等の単純なミスが繰り返され、結果的に的外れな候補遺伝子を得ることに繋がってしまった。そればかりでなく、カブラハバチの飼育もままならない状態に陥り、RNAiに供試した個体を解析半ばにして絶やしてしまい、実験のやり直しを強いられるなど表現型解析の結果を得るまでに予想以上に時間が掛かってしまった。しかしながらその後SNPs解析を始めからやり直すことで、カブラハバチの相補性性決定に密接に関与すると予想されるゲノム領域(雌でのみヘテロとなるSNPsを1kb以内に10箇所以上に含む領域)を4カ所みつけることができた。以上の理由により、現在までの進捗状況を「やや遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
カブラハバチの性は相補性性決定機構により決まることが知られている。すなわち、ある一遺伝子座がヘテロ接合のとき雌に、ホモ接合の場合は雄となる。この遺伝子座を同定するためには、雌雄のゲノムを比較し、雌でのみヘテロ(かつ雄では常にホモ)となるゲノム領域を見いだす必要がある。昨年度実施したSNPs解析により、雌でのみヘテロとなるSNPsを1kb以内に10箇所以上に含むゲノム領域を4箇所みつけることに成功した。このうちひとつは、1kb以内に32箇所の雌へテロSNPsを含む高度に雌へテロ化された領域であることから、この領域が相補性性決定機構の責任領域である可能性が高い。この点について検証するため、異なる系統に属する複数の雌雄の当該ゲノム領域の塩基配列を決定し、常に雌でヘテロ、雄ではホモであることを確認する。この点について確認できたなら、当該ゲノム領域をCRISPR/Casを用いたゲノム編集により欠失変異体を作製し、その変異が性分化に及ぼす影響を調査する。これに関連して、カブラハバチにおける現行のノックアウト法は非常に煩雑であるため、卵へのインジェクションフリーな手法として注目されているReMOT法(sgRNAとCas9を母親の腹腔内に注入し卵巣卵に取り込ませることでノックアウトを実現する手法)の本種への実用化を目指す。一方、当該ゲノム領域をPCRにより増幅し、その塩基配列を決定したところ、現時点で公開されているカブラハバチの代表的リファレンスシーケンスには存在しない約3kbの塩基配列を含むことが判明した。この新規に同定されたゲノム領域にコードされている遺伝子の存否を確認するため、性決定時期のRNA-seqを行い、このゲノム領域をリファレンスシーケンスとしてRNA-seqのリードをマップする。同定された遺伝子をノックアウトによる機能解析に供試し、性決定に関わる遺伝子を絞り込む。
|
Research Products
(12 results)