2020 Fiscal Year Annual Research Report
配偶戦略の性スペクトラムを生み出す分子神経基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
20H04925
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 秀明 岡山大学, 自然科学研究科, 特任教授 (00376534)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オキシトシン / Tet-ONシステム / シングルセルトランスクリプトーム / 配偶者選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) オキシトシンが配偶戦略の性スペクトラムを生み出す機序を解明する目的で、2020年度はメダカ脳内でオキシトシンの標的となるオキシトシン受容体発現するニューロンを解析する準備を行なった。これまでにオキシトシン受容体は視覚一次中枢である視蓋の特定の層構造に選択的に発現することを示している(PNAS 2020)。そこで本研究ではシングルセルトランスクリプトーム法をメダカ視蓋を用いて実施して、オキシトシン受容体ニューロンのシングルセル遺伝子発現プロファイルを作成することを目指した。これにより、オキシトシン受容体ニューロンにおいて性差がある遺伝子を検索する。2020年度はメダカ脳を用いた予備実験を行なって、摘出した脳をプロテアーゼ処理及び物理的な攪拌の条件を検討して、メダカ脳を1細胞レベルで分離できる条件を確定した(細胞生存率90%以上)。さらに実験全体のデザインや細胞分離やライブラリー作成についてのプロトコルを作成した。 (2) オキシトシンの発現量依存に性スペクトラムを生み出されるという仮説を検証する目的で、2020年度は外来遺伝子を薬剤投与量依存に強制発現する技術(Tet-ONシステム)をメダカを用いて開発した。ゼブラフィッシュで利用されていた転写活性化因子 rtTA はメダカではワークしなかったが、rtTAにいくつかのアミノ酸変異を導入した結果、メダカでも機能するTet-Onシステムを確立できた。これにより、メダカ神経系でも薬剤(ドキシサイクリン)の投与量依存してTREプロモータに結合して転写を活性化することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度にシングルセルトランスクリプトーム法を共同利用施設(基礎生物学研究所)で実施する予定であったが、コロナ感染防止対策のため県外に出張して実験することが予定通りできなかった。そのため東北大で条件検討のみを実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 2021年度はメダカ視蓋を解剖摘出して1細胞レベルで分離して、6,000-12,000細胞を回収してシングルセルトランスクリプトーム法を行う。これにより1細胞当たり平均で22,500リード/cell, 1,300遺伝子/cellを同定する予定である。これによりオキシトシン受容体発現ニューロンにおいて遺伝子発現に性差がある遺伝子を検索する。 (2) Tet-ONシステムを用いてオキシトシン遺伝子の発現の時期と量を人工的に制御できる遺伝子改変メダカを作成する。これによりオキシトシン遺伝子発現量依存に配偶者戦略の性スペクトラムが生まれるか検討する。これと併行して、最初期遺伝子座に rtTA を導入したノックイン系統 (IEG:rtTA系統)と、TREプロモーター依存に蛍光タンパク質が発現する系統(TRE:GFP系統)の両系統を掛け合わせた系統を作成し、薬剤添加条件下で行動実験をすることでオキシトシン変異体と野生型の配偶行動における神経活性化パターン(視覚情報処理過程)の違いを検索する。脊椎動物ではオキシトシン受容体は社会認知に関わる脳部位に発現しており、嗅覚情報を介して同種認知する齧歯類ではオキシトシン受容体は一次嗅覚中枢で働いて、社会シグナルに対する感度にバイアスを与える働きがある。本研究では、メダカ視蓋では、オキシトシンが視覚的な社会シグナル(異性を見分ける能力)にバイアスを与える役割を性特異的に担う可能性を検討する。
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