2020 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of Y chromosome genes on the sex spectrum of body balance
Publicly Offered Research
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
20H04934
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
的場 章悟 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (20585202)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 性スペクトラム / Y染色体上遺伝子 / CRISPR / ボディバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の雌雄(男女)は一見して容姿で見分けられるほど様々な部位で異なる表現型(性スペクトラム)を示すが、Y 染色体上の遺伝子はどのように性スペクトラムへ影響するのだろうか?申請者はこれまでのマウスを用いた研究から、Y 染色体上遺伝子のノックアウトによって形態的な性スペクトラム表現型(体重・体長・BMI)が変動しうることを見出してきた。本研究では、これまでの解析をさらに発展させ、詳細かつ高解像度な形態解析を実施し、性スペクトラムの代表的な表現型として「ボディバランスとY 染色体上遺伝子」との関連を明らかにする。 まず、Y 染色体上の遺伝子のうち7 遺伝子(Usp9y, Ube1y1, Sry, Uty, Zfy1, Zfy2, Rbm31y)が既にノックアウトすると少なくとも体長・体重・BMI などのボディバランスに影響があることが分かっている。こうして絞り込んだ7 遺伝子について、それぞれ3 つのsgRNA を合成しCas9 mRNA とともにC57BL/6J 系統の受精卵に注入しノックアウト胚およびマウスを作製する。昨年度よりこれらマウスの作製を進めている段階である。 一方でその表現型の評価系としてMicro-CT によって全身のボディバランスを解析する。各実験群について胎児および成体についてそれぞれ4 個体を解析予定である([7 遺伝子+雌雄コントロール: 9 群]×2 ステージ×4 個体=72検体)。これらの詳細な解析によって、Triple CRISPR のファウンダーのボディバランスが性スペクトラム上のどの位置にいるかを定量的に決定する。本年度はコントロール個体を用いてMicro CTを実施し、どのパラメーターが検出可能かについて検討を進めた。今後はさらにノックアウト個体に実験を進展させる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず計画していた通り、Y染色体上の7遺伝子についてCRISPR法を用いたノックアウトマウスの作製を進めている。また、表現型評価系として使用予定のMicro CT解析について、野生型個体雌雄を使ってその有効性を検討し、骨密度や骨内形態、顔面相貌など様々な性スペクトラム表現型が実際にマウスでも定量的に解析可能であることを確認した。ただし、ノックアウトマウスを使った表現型解析は現在調整中である。その原因としては、単純なMicroCTで解析可能な項目ではボディバランスの変動を理解するにはやや包括性が足りないことが危惧されるためである。単純MicroCTを使用した解析では捉えにくいボディバランスのパラメーターを追加できる技術(造影法など)を検討しており、解析項目が確定したのちに実際のノックアウトマウスの解析を開始する予定である。 一方で、これまでの研究成果(第一段階として行ったY染色体遺伝子と全身の性スペクトラム表現型のスクリーニング結果)について、国内学会にて発表した。さらに、大規模表現型データ解析の専門家と共同研究により論文化を進めている。コントロール群として使用する野生型個体データについて、これまで日本マウスクリニックに蓄積された他の野生型データも追加して解析することで、より正確性の高い統計的解析を実施する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はMicroCTを使用した野生型個体の解析方法について、造影手法を検討しつつさらに解像度の高いデータを獲得する手法を検討する。その後、解析手法の確立とともにY染色体上の7遺伝子のノックアウトマウスをそれぞれ胎児および成体についてそれぞれ4 個体を解析予定である([7 遺伝子+雌雄コントロール: 9 群]×2 ステージ×4 個体=72検体)。Micro-CT解析によって何らかの表現型の得られたY染色体遺伝子のノックアウトマウスについて、その表現型がどうして得られたのか分子レベルで解析を行う。 Micro-CT解析によって何らかの表現型の得られたノックアウトマウスについて、その表現型がどうして得られたのか分子レベルで解析を行う。特に対象器官の発生過程での対象遺伝子およびその下流遺伝子の発現パターンを免疫染色およびRNAシーケンシングによって詳細に解析する。対象遺伝子のコードするタンパク質はユビキチン関連(Usp9y, Ube1y1)、転写因子(Sry, Zfy1, Zfy2)、エピゲノム修飾酵素(Uty)、RNA結合(Rbm31y)など多岐にわたる。それぞれの性質に応じてプロテオーム、ChIP-seq、RIP-seqといった生化学的解析を通じて器官形成期に対象遺伝子がどのように機能しているかを分子レベルで解析する。下垂体、副腎、精巣などホルモンにより全身の表現型に影響しうる臓器に表現型が見られた場合は、各ホルモン濃度の測定等の解析も行う。最終的にデータをまとめて論文として投稿予定である。
|
Research Products
(11 results)