2020 Fiscal Year Annual Research Report
包括的1細胞遺伝子発現解析による老化制御メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
20H04940
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
城村 由和 東京大学, 医科学研究所, 助教 (40616322)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 細胞周期 / 脂肪肝 / 腎臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化は個体老化・加齢性疾病の発症・進展に深く関与することが知られている。本年度は、生体内における細胞老化の役割を解明するために、世界で初めて老化細胞を個体で同定・単離・トレースを可能にした『p16-tdTomatoマウス』を用いて、加齢に伴い老化細胞が増加し、糸球体硬化などの加齢関連変化を示すことが知られている腎臓における一細胞RNA-seq解析を行った。その結果、腎臓に含まれる多くの細胞種において老化細胞が認められた。その中でも特に、近位・遠位尿細管上皮細胞で割合が高かった。さらに詳細な遺伝子発現解析を行ったところ、近位尿細管上皮細胞は、細胞老化に伴って、個体老化の鍵分子の一つであるmTORの活性制御に関わる遺伝子群やタンパク質恒常性破綻に伴うERストレス関連遺伝子群の発現上昇が認められた。一方、、遠位尿細管上皮細胞においては、細胞老化に伴って、炎症性サイトカインの発現、高血圧関連遺伝子群、腎臓の線維化に関わる遺伝子群に大きな変化が認められた。これらの結果は、加齢に伴う腎臓の機能変化に近位・遠位尿細管上皮細胞の細胞老化が重要であることを示唆された。 また、老化細胞の可視化・除去を同時に行える『p16-DTR-tdTomatoマウス』も樹立した。このマウスを用いて、コリン欠乏・低メチオニン高脂肪食を用いて非アルコール性脂肪肝炎を誘導したところ、病状の進行に伴い老化細胞の増加が認められた。さらに増加した老化細胞を除去すると、脂肪蓄積や免疫細胞の浸潤などの代表的な症状が大幅に改善されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
老化細胞を個体で同定・単離・トレースを可能にした『p16-tdTomatoマウス』から採取した腎臓を用いた一細胞RNA-seq解析から、これまで不明であった腎臓内の老化細胞の細胞構成・遺伝子変化を網羅的に明らかすることができた。さらに、老化細胞の除去も可能なマウスを樹立・解析することで、老化細胞の除去が有効な治療法のない非アルコール性脂肪肝炎に有効である可能性を示すことができた。さらに、これらの研究成果に関して、有力な国際医科学誌に報告できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の一細胞RNA-seq解析では、比較的若齢期のマウスから採取した腎臓を用いた。今後は、老齢マウスから採取した腎臓を用いて同様のアプローチを検討する必要がある。また、慢性腎不全・急性腎不全モデルを用いた検討も進める。また、他の臓器・組織に関しても同様の解析を進める予定である。
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