2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of integrated analysis method of single-cell transcriptome data for elucidating inflammatory process
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
20H04947
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 秀雄 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50183950)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 1細胞トランスクリプトーム解析 / 遺伝子発現解析 / 細胞系譜解析 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの骨髄や脾臓、末梢血から採取した顆粒球細胞(末梢血由来の細胞ではLPSやGM-CSFで経時的に刺激)のシングルセルRNAシーケンスデータを取得し、このデータに対して細胞系譜の推定を行った。推定結果として、骨髄由来の顆粒球細胞の集団を出発点として、炎症の種類や進行度合いに応じた細胞系譜が推定された。 次に、マウスの胚性幹細胞(以下、ES細胞)に分化誘導をかけて主に神経細胞に分化させた経時的な分化過程において、シングルセルRNAシーケンスデータを取得し、このデータに対して細胞系譜の推定を行った。この細胞系譜推定でも、ES細胞の集団を分化の出発点として、中間的な前駆細胞の集団から、さらに分化の進んだ細胞の集団への細胞系譜が推定された。 さらに、これらの推定で得られたそれぞれの細胞系譜に沿って発現変動する遺伝子群を、発現変動遺伝子解析により特定した。 以上のように推定された細胞系譜を検証するため、細胞分化や炎症進行に関与する遺伝子の候補を抽出し、それらを蛍光標識して、分化や炎症進行過程での遺伝子発現量の経時的変化をライブイメージングにより計測することを計画している。このためには、個別の細胞を長時間に渡りフォーカスして追跡する必要があるため、二光子励起顕微鏡で観察されたライブイメージング画像から細胞を追跡する手法を開発した。この手法を顆粒球細胞動画像に適用したところ、既存の細胞追跡手法より長時間に渡って細胞の取り違えを起こさずに追跡できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LPSやGM-CSFで経時的に刺激したマウスの末梢血から採取した顆粒球細胞のシングルセルRNAシーケンスデータに適用したところ、顆粒球細胞が刺激時間に応じて炎症が進行する過程を細胞系譜として推定することができた。次に、分化誘導をかけマウスES細胞から経時的に取得したシングルセルRNAシーケンスデータに対して、本研究での細胞系譜推定手法を適用したところ、ES細胞から神経前駆細胞を経て、神経細胞へと分化する一連の細胞系譜が推定された。また、これらの推定で得られたそれぞれの細胞系譜に沿って発現変動する遺伝子群を、発現変動遺伝子解析により特定できた。 以上の推定結果を検証するため、細胞系譜に沿って発現変動する遺伝子群を蛍光標識して、ライブイメージングにより経時的に発現量を計測するシステムを提案した。このシステムで発現量を計測するには、蛍光顕微鏡でフォーカスした細胞を長時間に渡って追跡する必要があるため、顕微鏡画像から深層学習に基づくオブジェクトトラッキングにより、長時間の細胞追跡を行う手法を開発した。この手法を、実際に二光子励起顕微鏡で経時的に撮影した顆粒球細胞動画像に適用したところ、既存の細胞追跡手法より長時間に渡って細胞の取り違えを起こさずに追跡できることを示した。 以上のことから、本研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、経時的に取得したシングルセルRNAシーケンスデータに対して、細胞系譜の推定、発現変動遺伝子の予測、ライブイメージングによる細胞追跡と遺伝子発現量の経時的計測の手順で段階的に予測・推定手法を適用していく。このため、単純に各段階の手法を順次適用していくと、前段の予測または推定の誤差がそのまま後段に引き継がれて誤差が累積することになる。そこで、今後は、後段の手法の結果を前段の手法にフィードバックすることで、前段の誤差の影響を抑える方法論を確立する。また、本手法で予測された発現変動遺伝子を、細胞アトラスに登録されたデータと比較・照合することで、予測精度の評価や、手法の改良につなげていく。 次に、細胞のライブイメージングでは、長時間に渡って継続的に細胞を追跡し、蛍光輝度から遺伝子発現量を計測することが必要となる。しかし、実際には、観察中に追跡している細胞の取り違えが発生することや、追跡中の細胞が死滅することが予想される。また、同時に観察できる細胞や遺伝子の数が限られるため、網羅的に細胞や遺伝子を観察するのは困難である。そこで、炎症進行過程の種々の時点で細胞を追跡し、様々な遺伝子で発現量を計測できたデータを教師データとして深層学習により学習し、新たな細胞追跡と遺伝子発現量のデータも半教師学習により順次付加したモデルを構築することで、顕微鏡での観察回数を削減できることを試みる。
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