2020 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of inflammation, allergy, fibrosis, and tumorigenesis through the innate immune system
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
20H04954
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岩倉 洋一郎 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 教授 (10089120)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | C型レクチン受容体 / アレルギー性気道炎症(AAI) / DSS誘発性大腸炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. これまでC型レクチン受容体(CLR)の一つであるDectin-1が、腸内細菌叢の調節を介してTreg細胞の分化を制御し、腸管の免疫恒常性維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究では腸管以外への影響を調べるために、アレルギー性気道炎症(AAI)に対するDectin-1欠損の影響を調べた。AAI誘導後、リンパ節や気管支肺胞洗浄液に含まれるTreg細胞の割合が、Dectin-1欠損マウスで増加し、AAIを抑制することがわかった(Han et al., J. Immunol., 2021)。この結果、Dectin-1の阻害により、腸管だけでなく、他の臓器の炎症も制御できることがわかった。 2. Tarm1は免疫グロブリンスーパーファミリーの一員で関節炎局所で高発現していたので欠損マウスを作製してその機能を検討した。その結果、この分子は樹状細胞(DC)で発現しており、コラーゲンを認識することにより、DCの成熟、抗原提示に重要な役割を果たしており、この分子を阻害することによりCIAを治療できた(Yabe et al., Nat. Commun., 2021)。この結果は自己免疫疾患の新たな治療標的として注目される。 3.一部のCLR欠損マウスにおいて、DSS誘導大腸炎およびAOM-DSS誘導大腸腫瘍の症状が軽症化することを見出した。この場合、DCからのサイトカイン・ケモカインの産生が大きく異なっており、そのために炎症性細胞の遊走やミエロイド由来制御細胞の分化、腫瘍形成などが抑制されていた。別のCLR欠損マウスでは重症化が認められ、腸内細菌叢が重症化に重要な役割を果たしていることが分かった。このように腸管におけるCLRは感染防御の他に、腸管免疫や腫瘍形成の制御などに多様な活性を持つことが明らかになった。今後これらの作用メカニズムを細胞社会学的観点からさらに詳細に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,卵白アルブミン(OVA)によって誘発された AAIは、くしゃみの回数や、肺胞洗浄液中の好酸球、好中球、マスト細胞の浸潤の程度から判断し、Dectin-1欠損マウスで軽症化することを見出した。抗生物質処理は、腸のTreg細胞の存在量を減少させ、Dectin-1欠損マウスの症状を悪化させ、野生型マウスとの差を無くした。Dectin-1欠損マウスから野生型マウスへの腸内細菌の移植は、腸のTreg細胞の存在量を増加させ、AAIを改善した。さらに、抗CD25抗体によりTreg細胞を除去すると、OVA誘導AAIにおけるWTマウスとDectin-1欠損マウスの差が認められなくなった。これらの所見から、Dectin-1を介したシグナルを抑制することにより、腸管だけでなく、全身的にTregが増加し、アレルギー性の炎症応答を抑制することが分かった。 2. CLRの腸管免疫制御における役割を検討するため、CLR欠損マウスを作製し、これらのマウスに潰瘍性大腸炎のモデルであるDSS誘導大腸炎、および大腸癌のモデルであるAOM-DSS誘導大腸ポリプ形成やApcMinマウスにおけるポリプ形成を検討した。発症病理を検討するために、糞便の微生物組成を検討するとともに、共同飼育や無菌か、抗生物質処理により、腸内細菌叢の影響を検討した。さらに、遺伝子発現の影響を調べるために、総括班の支援を得てsingle cell transcriptome解析を行うと共に、RNA-seq、qPCRによる確認を行なった。その結果、一部のCLR欠損マウスでは大腸炎と結腸癌の発症が軽減したが、これらには腸内細菌は関与しておらず、CLRを介したシグナルにより特定のサイトカイン遺伝子や蛋白質合成酵素遺伝子の発現が制御されていることが原因であることが分かった。また、別の欠損マウスでは腸内細菌の関与が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 腸管のTreg が肺や関節などの他の臓器に及ぼす影響の解析。Dectin-1 欠損マウスではOVA 誘導気道過敏症やコラーゲン誘導関節炎が抑制されることを見出しており、その抑制メカニズムを明らかにする。このため、腸管で誘導されたTreg (iTreg:RORgt+Helios-Foxp3+)が他臓器へ移行して機能しているのか、それとも可溶性の短鎖脂肪酸などを介して局所臓器でTregが誘導されているのかを解析する。また、他臓器への移行メカニズムを明らかにする。 2.CLR ファミリー分子の大腸炎や大腸ポリプ形成における役割の解析。一部のCLR欠損マウスは、大腸炎や大腸ポリプの発症率が異なることを見出した。Myeloid 細胞に発現するこれらのCLR が発現細胞自身の活性に影響している可能性や腸内微生物叢に影響を与える可能性、ポリプ内に浸潤する細胞集団に影響を与える可能性、などをシングルセル解析などによって解析し、炎症や腫瘍形成における役割を明らかにする。 3.CTRP ファミリー分子の腎炎、および腎線維化における役割の解析。CTRPファミリー の一部は補体活性化を抑制することにより、腎炎や肺の線維化を抑制することが知られている。この時、モノサイト/マクロファージが筋線維芽細胞へと分化誘導されるが、モノサイト/マクロファージは多様であり、腎臓や肺でどの細胞が筋線維芽細胞へと分化し、CTRP蛋白質 はどのステップを阻害するのかを明らかにする。そして、これらの分子による腎炎、腎不全に対する治療の可能性を検討する。 これらの解析により、1.に於いては、大腸炎だけでなく、気道過敏症に対する予防治療薬、2に於いては新たな抗IBD治療薬、および抗癌治療薬、3に於いては、腎症、線維化に対する治療薬開発の手がかりを得る。
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Research Products
(16 results)