2020 Fiscal Year Annual Research Report
IBD発症過程で生じるTh/Treg imbalanceの動態解析
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
20H04958
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
関谷 高史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 免疫応答修飾研究室長 (80519207)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫学 / 生体イメージング / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. シングルセルRNA-seq・TCRレパトア解析(scRNA-seqレパトア解析)で各Th/Tregサブセットへの偏りを示したTCRa/b配列の発現ベクターの作製を完了した:scRNA-seqレパトア解析で、特定のTh,Tregサブセットへの偏りを示したTCRa/b配列(内訳:Th1・3種類、Th17・3種類、Th1/17/・2種類、Treg・4種類、non-canonical Th・3種類)に対し、各配列を遺伝子合成により作製し、レトロウイルス発現ベクターを構築した。 2. 目的のTCRa/b鎖を発現するナイーブCD4T細胞の分化をin vivoで解析し、Th1, Th1/17, Tregへの「分化指向性」を賦与するTCRa/b鎖を同定した:上記の通り作製した発現ベクターを用い、各TCRa/bを発現するナイーブCD4T細胞を取得し、T細胞欠損マウスに移入後、それぞれの細胞のTh,Treg分化を解析した。その結果、複数のTCRa/bに関し、scRNA-seqレパトア解析で見られた分化と同様の分化パターン(Th1・2種類、Th17・2種類、Th1/17・2種類、Treg・1種類)が再現された。 3. 単独で腸炎を惹起するTCRa/b鎖配列を同定し、トランスジェニックマウスの作製に着手した:上記の研究で見出した、Th1/17細胞への分化指向性を賦与するTCRa/bの一つは、このTCRを発現するナイーブCD4T細胞のみの移入で、レシピエントRag2-/-マウスに腸炎を誘導できることが確認された。このTCRa/bの解析は腸炎における主要な抗原の同定や、腸炎誘導性の炎症性Th細胞の分化が誘導されるニッチ環境の同定に結びつくことが期待される。従って、このTCRa/bに関しては特に重点的に解析するために、TCRトランスジェニックマウスの作製に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず当該年度の研究では、TregとTh1/17(IFNgとIL-17両陽性の炎症性ヘルパーT細胞)細胞への分化指向性を示すTCR配列を見出すことに成功した。さらに、これらのTCRを発現するCD4T細胞が活性化する場にも特徴を見出すことに成功した。しかし現時点では、TregやTh1/17細胞への分化指向性が再現性を持って示されたTCRは共に1種類ずつであるため、普遍性を議論できる段階に到達していない。計画では、当該年度の研究ではTreg, Th1/17細胞が活性化する場を複数種類のTCRで裏付け、それらの場の詳細な解析に着手している予定であったため、「やや遅れている」との判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究では、Treg細胞およびTh1/17細胞への「分化指向性」を賦与するT細胞受容体(TCR)をそれぞれ2種類ずつ同定し、それらのTCRを発現するトランスジェニック(Tg)マウスの作製を完了した。 一方、当該年度の研究ではscRNA-seq TCRレパトア解析をもう一度行っており、TregとTh1/17細胞への偏りを示したTCR配列を新たに複数見出している。従って、残りの研究期間ではこれらのTCR配列を新たに加え、まずTreg, Th1/17細胞が活性化する場を複数種類のTCRで裏付ける。 さらに、それらのトランスジェニックマウスを活用し、炎症性のTh1/17細胞と抗炎症性のTreg細胞の分化を対比的に捉えた解析を進める。まず、IBDの発症過程においてTh1/17細胞およびTreg細胞が分化する場を検出する。この実験では、上述の、それぞれのサブセットへの分化指向性を賦与するTCRを発現するTgマウスを、Nr4a1レポーターマウスと交配する。このマウスから取得したナイーブCD4T細胞をRag欠損マウスに移入し、IBDの発症で生体イメージングを行うことで、Th1/17細胞及びTreg細胞の分化の場を検出する。 続いて、以上の試みで見出されたTh1/17細胞およびTreg細胞の分化の場を、開腹後のin vivoイメージングにより正確に摘出し、①免疫染色による組織学的解析 ②一細胞RNA-seqによる、各サブセットの分化誘導に寄与する細胞種の同定 ③分化誘導に寄与する分子の同定 ④それらの部位における細菌叢の解析 を行う。この試みにより、IBDの発症過程で各サブセットの分化誘導に寄与する「ニッチ環境」を明らかとする。特に、②の一細胞RNA-seqによる細胞種の同定の試みでは、各サブセットそれぞれにおける解析結果を比較し、特異的にenrichした細胞種を候補として絞り込む。
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[Journal Article] Essential Roles of the Transcription Factor NR4A1 in Regulatory T Cell Differentiation under the Influence of Immunosuppressants2022
Author(s)
Takashi Sekiya, Hidenori Kasahara, Ryo Takemura, Shinya Fujita, Jun Kato, Noriko Doki, Yuta Katayama, Yukiyasu Ozawa, Satoru Takada, Tetsuya Eto, Takahiro Fukuda, Tatsuo Ichinohe, Minoko Takanashi, Makoto Onizuka, Yoshiko Atsuta, Shinichiro Okamoto, Akihiko Yoshimura, Satoshi Takaki and Takehiko Mori
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Journal Title
The Journal of Immunology
Volume: in press
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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