2020 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸トランスポーターSLC15A3が担う炎症細胞社会構築と肺線維化メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Preventive medicine through inflammation cellular sociology |
Project/Area Number |
20H04959
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
小林 俊彦 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 副プロジェクト長 (40613203)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 線維症 / 炎症 / アミノ酸トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、肺線維化のメカニズムを アミノ酸トランスポーターSLC15A3 に依存した炎症細胞社会構築という新しい視点から理解するために、線維化が著しく改善する SLC15A3 欠損マウスの肺における炎症細胞社会の質的量的変容の実体を詳細に把握し、その因果関係を理解することによって、新規の線維化制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度はSLC15A3の有無による肺線維化過程の炎症細胞ネットワークの変容の実態把握を中心に解析を進めた。 まず、ブレオマイシン投与による肺の線維化モデルを用いて、肺線維化マウスにおける肺胞洗浄液中のケモカイン/サイトカイン産生をmultiplexで定量し比較解析した結果、SLC15A3欠損では早期のサイトカインは野生型と遜色ないものの、後期で産生パターンの変化が見られた。そこで肺組織において、CD45、細胞系列マーカーを指標に免疫系細胞、非免疫系細胞をフローサイトメトリーで経時的な解析を行い、性状解析を行った。また、計画班と共同研究で経時的なsingle-cell transcriptome 解析を行った。その結果、SLC15A3欠損肺においては、マクロファージの亜集団が変容していることを見出した。さらに、線維化過程におけるマクロファージの役割を明らかにするため、マクロファージ特異的 cKOマウスの作製、マクロファージの線維化肺への移植法により、線維化病態の変化を解析した。今年度の成果をまとめ、論文化の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画に掲げた(1)SLC15A3の有無による 肺線維化過程の炎症細 胞ネットワークの変容の実態把握(2) 線維化肺におけるサイトカインプロファイリング(3) 線維化の過程で線維芽細胞が炎症細胞社会構築に果たす役割(4) 線維化の過程でマクロファージが炎症細胞社会構築に果たす役割、について、(1) および(2)は計画通りもしくは計画以上に進んだこと、(3)(4)に関しては、cKOマウスの樹立に時間がかかっているが、cKOを用いない系においてこれら細胞種の肺線維化における役割を解明することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は前年度で得られた結果を元に、SLC15A3の欠損による線維化改善の実態解明を中心に、以下の事項について解析を進め、結果をまとめて論文化する。(1) 他モデルによるSLC15A3依存性肺線維化の改善過程の実態把握 よりヒトの肺線維症のメカニズムに近いシリカ投与による肺の線維化モデルを用いる。肺組織についてCD45、細胞系列マーカーを指標に免疫系細胞、非免疫系細胞をフローサイトメトリーで詳細に解析を行い、SLC15A3の有無で差が認められる細胞集団を同定、性状解析を行う。 (2) 線維化の過程でマクロファージおよび線維芽細胞が炎症細胞社会構築に果たす役割 昨年度樹立に及ばなかったマクロファージ特異的あるいは線維芽細胞特異的に SLC15A3 を欠損するconditional KO マウス(SLC15A3 cKO)を用い、線維化の過程で浸潤する造血系細胞および肺実質内の細胞集団を(1)と同様に解析し、SLC15A3 cKO の炎症肺で、量的質的に変化する細胞集団を同定し、線維化における炎症細胞社会構築の重要性を明らかにする。(3) 前年度の線維化過程における遺伝子解析結果を元に、候補遺伝子 or タンパク質をターゲットとした阻害剤あるいは遺伝子工学的方法を用いて機能抑制を行い、線維化病態の変容を解析する。
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Research Products
(2 results)