2020 Fiscal Year Annual Research Report
南極暖湿化の原因とその影響の定量化
Publicly Offered Research
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
20H04963
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 和敏 北見工業大学, 工学部, 助教 (60771946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 南極 / 温暖化 / 中緯度海洋 / 中・高緯度相互作用 / 大気・海洋相互作用 / データ同化 / 雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の再解析データや数値モデルを用いて、南極圏の気温・水蒸気量の長期変動やその変動を引き起こす局所的・遠隔的大気現象の影響を明らかにする解析を実施した。 南極大陸での気温の長期変動やその変動を引き起こす原因に着目した研究では、南極大陸全体の表面気温は50年以上の規模でみると統計的に優位な昇温傾向が見られ、気温上昇に伴う下向き長波放射の増加が表面気温上昇を引き起こしていることを明らかにした。また、南極大陸内部では、雲量増加による下向き長波放射増加も表面気温上昇に影響していることがわかった。気温上昇や雲量の増加には、南半球での大気循環などのスケールの大きな現象だけでなく、海氷減少などのスケールの小さい現象の変動も影響していることを示した。 スケールの大きな大気現象については、中緯度海洋の変動による大気応答が引き起こす南極半島の昇温に着目した研究も実施した。オーストラリア東部に位置するタスマン海の水温が上昇すると、南大洋上の低気圧の経路が極域側に変化し、南極半島に高温をもたらす大気場が形成されやすくなる。これまで熱帯の水温変動が引き起こす大気応答と南極半島の昇温に着目した研究がほとんどであったが、再解析データや数値モデルを用いて中緯度海洋の水温変動が南極大陸の高温に影響していることを実証した初の研究である。 観測データが数値予報モデルの天気予報精度に与える影響に関する研究については、海洋研究開発機構で独自に開発されたデータ同化システムや大気大循環予報モデルを用いたデータ同化実験を実施した。南極にある日本の昭和基地で取得されているレーダー観測データがオーストラリアに接近する低気圧の予報精度に影響している可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南極大陸の気温上昇に着目した研究の進捗状況は順調である。南極半島の昇温を引き起こす原因に着目した研究については、査読付き国際誌で出版され(Sato et al. 2021 Nature communications)国内外でプレスリリースを行っただけでなく、Nature communicationsのEditors’ Highlightsにも選出され国際的にも注目を受けている。北極海の表面気温の昇温とその原因に着目した研究については、英語の論文としてまとめ、国際誌に現在投稿中である。南極大陸の氷床質量の変動や南半球高緯度の雲の変動、観測データ同化に関する研究についても解析を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
南極圏の水蒸気量の長期変動やその変動を引き起こす局所的・遠隔的影響を明らかにし、南極大陸の氷床質量へ影響も調べる。また、南半球高緯度での大気・海洋・海氷の変動が中緯度の大気に与える影響を調べる。具体的には、南大洋上で発生する雲に着目し、南極大陸周辺での海氷や海洋変動が雲の特性に及ぼす影響を明らかにする。データ同化に関する研究については、これまでの解析結果を英語の論文としてまとめ、査読付き国際誌に投稿する。
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