2020 Fiscal Year Annual Research Report
Research on low-level clouds over the Southern Ocean using satellite observation and LES
Publicly Offered Research
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
20H04967
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千喜良 稔 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (20419146)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 南大洋 / 下層雲 / 衛星 / LES / エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
南大洋は、過去と将来の気候変動を理解する上で重要な地域であるが、多くの気候モデルにおいてこの地域の下層雲が大きく過小評価されており、このことがモデルによる過去と将来の気候変動の再現にとって大きな障害となっている。本研究は、気候モデルにおけるこの地域の下層雲の表現の改良に資するように、衛星観測データとシミョレーションによって、この地域の下層雲の素過程を明らかにすることを目指している。
本研究実施期間の第一年度において、申請者は、衛星観測データの解析を進めた。CALIPSO衛星が提供する雲のデータ、CloudSat衛星が提供する雲のデータ、Aqua衛星に搭載された大気赤外サウンダーAIRSが提供する気温と水蒸気プロファイルのデータ、ECMWFの再解析データが提供する鉛直流と水平風のデータを入手し、それらを組み合わせた解析の手法を検討し、データ処理のためのプログラムの開発を行った。具体的には、大規模な領域において、雲が大気の環境(気温・水蒸気・風)に依存してどのように変化するかを解析するための、手法の検討・開発を行った。
本研究によって、南大洋の下層雲が、大気の状態によってどのように変化するかが衛星観測のレベルで明らかになり、あとで行われる南大洋の下層雲のシミュレーションの実験設定の作成に役立つ。また、シミュレーション結果の比較対象を提供する。これらを通じて、南大洋の下層雲の素過程を理解し、気候モデルの改良につながると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画では、研究実施期間の第一年度において、複数の衛星観測データを組み合わせた解析のためのデータ解析プログラムの開発を完了し、初期的な結果を出す予定だった。しかし、一昨年来続けていた他の研究プログラムの仕事に予想以上の時間を費やさなければならなかったため、そこまでには至らず、データ解析プログラムの開発を引き続き続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に進めた衛星観測データの解析プログラムの開発を続け、本年度の早い段階で完了する。その上で、大気の環境(気温・水蒸気・風・エアロゾル)に依存して、南大洋の下層雲の構造がどのように変化するか明らかにする。具体的には、雲頂高度とエアロゾルの光学的厚さの2変数に対して、様々な変数の2次元(雲頂高度軸-エアロゾル軸)のビンを作成する。ビンの対象となる変数は、雲量、積雲の雲量、気温、水蒸気、鉛直流、水平風、海面水温、海上風速である。境界層上端の層積雲がどのような条件で浅い積雲に変化するのかについて、亜熱帯や陸上の下層雲について行われてきた先行研究を参照しつつ、氷や過冷却水が介在していることを考慮して解釈を試みる。
また、以上の結果をふまえて、Large Eddy Simulationを用いた理想化されたシミュレーションの境界条件を作成する。先の衛星観測データの解析から、いくつかの典型的な下層雲のレジームを選択し、これに対応した気温・水蒸気・鉛直流・海面水温・海上風を抽出する。さらに、抽出されたこれらの鉛直プロファイルに似た、単純な関数によって表現される理想化された鉛直プロファイルを作成し、これを初期値とする。日程的に、研究実施期間内にシミュレーションの解析を十分に行うことは難しいが、シミュレーションの初期的な結果を出すことを目指す。
研究の遅れを挽回するために、当初50%としていたエフォートを70%に上げ、研究の速度を上げる。
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