2020 Fiscal Year Annual Research Report
南極氷床コアのダストとブラックカーボンの高精度・高時間分解能分析による古環境復元
Publicly Offered Research
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
20H04980
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
東 久美子 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (80202620)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 南極氷床コア / ダスト / ブラックカーボン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダストとブラックカーボン(BC)が放射強制力に及ぼす影響や、気候変動に伴う砂嵐・森林火災の変化のメカニズム解明に資するため、最終氷期最寒期~完新世中盤にかけての時代に着目し、南極ドームふじで掘削された氷床コア(ドームふじコア)のダストとBCを分析し、その変動を研究している。高時間分解能のデータが必要であるため、氷床コア連続融解分析システム(CFAシステム)を用い、CFAシステムを構成するレーザー式水同位体比分析計で水の安定同位体比を、レーザー遮蔽式の固体微粒子分析計(Abakus)でダストの濃度と粒径分布の分析を、白熱式BC分析計でBCの濃度と粒径分布の高精度分析を実施した。 ダスト粒子の体積濃度と粒径を正確に測定するため、高時間分解能の連続分析だけでなく、CFAシステムで50cmごとに自動分注した不連続試料の分析を行った。また、Abakusの高時間分解能・連続データから粒径をより正確に求めるため、データの解析方法を改良し、改良法で得られたデータをコールターカウンターのデータと比較することで、その妥当性を検証した。その結果、Abakusによって得られた体積濃度は誤差が大きいものの、数濃度は正確に測定できるようになった。次にダストの粒径変動を正確に捉えるための指標を検討した。従来、南極氷床コア中のダストの粒径を表す指標として用いられていたFPP(Fine Particle Percentageの略)の他に、ダスト粒子1個あたりの平均体積という新しい指標を導入し、モード径やFPPの変動と比較した。新しい指標は簡単に計算できると同時に、ダストの粒径変化の指標として有効であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響により、研究の遅れが生じたが、予算の繰り越しが承認されたことで、遅れを取り戻すことができ、以下の通り、順調に研究を進展させることができた。 ・CFAシステムによるドームふじコアのダスト、BC、安定同位体比について、従来にない高時間分解能、高精度のデータを取得することができている。BCについては、氷期をカバーする氷床コアにおいて世界初となる粒径のデータを取得することができた。ダストについては、コールターカウンターにより、50cm分解能の連続データを取得することができており、世界初の高精度の連続データとしての価値が非常に高い。ダスト濃度の低い完新世においても、詳細な変動が復元できることが明かになった。 ・BCデータの初期解析により、気候変動に伴ってBCの濃度だけでなく、粒径も変化することが明かになり、粒径データからも気候・環境変動に関する情報が得られることが明かになった。 ・ダストについては、Abakusのデータ解析ソフトを独自に開発・改良することで、数濃度について、従来にない高精度のデータが取得できるようになった。諸外国のAbakusのデータは、ダスト濃度の低い完新世では測定限界以下となり、データが殆どなかったが、本研究では、Abakusにより、間氷期でも高精度・高時間分解能の数濃度データが取得できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、CFAシステムを用いて、ドームふじコアを高時間分解能で連続分析する。最終氷期最寒期~最終退氷期との比較のため、最終氷期最寒期よりも古い時代のコアのCFA分析も行う。CFAシステムを構成するレーザー式水同位体比分析計で水の安定同位体比、レーザー遮蔽式の固体微粒子分析計(Abakus)でダストの濃度と粒径分布の分析を、白熱式BC分析計でBCの濃度と粒径分布の高精度分析を実施する。CFAシステムによる分析に加えて、CFAシステムで分注した融解水の一部を用いて、コールターカウンター分析を行い、ダストの粒径と濃度を50cm分解能で、高精度分析する。 本研究で取得したドームふじコアのデータを解析し、気温、BC、ダストの変動を高時間分解能で復元する。BCとダストについては、濃度だけでなく、粒径のデータについても解析を行う。ダストの粒径の解析には、FPP、モード径、及びダスト粒子1個あたりの平均体積という指標を用いる。 さらに、ドームふじコアの解析結果を、ドームCコア及びWAISコアのデータと併せて解析することで、気候変動に伴う南米の砂嵐・森林火災の発生頻度、規模、南極への輸送・沈着過程の変動を研究する。
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[Presentation] Continuous flow analysis of iron oxide in a Greenland ice core using a modified single-particle soot photometer2020
Author(s)
Goto-Azuma, K., Moteki, N. Ogawa-Tsukagawa, Y., Fukuda, K., Ohata, S., Yoshida, A., Mori, T., Kondo, Y., Koike, M., Hirabayashi, M., Dallmayr, M., Ogata, J., Kitamura, K., Matoba, S., Aoki, T.,2020
Organizer
The 11th Symposium on Polar Science
Int'l Joint Research
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[Presentation] アイスコア連続融解分析システムを用いたドームふじ深層氷床コアの 高時間分解能固体微粒子分析2020
Author(s)
東久美子, 尾形純, 福田かおり, 平林幹啓, 北村享太郎, 中澤文男, 小室悠紀, 塚川佳美, 藤田秀二, 米倉綾香, 川村賢二
Organizer
雪氷研究大会2020