2020 Fiscal Year Annual Research Report
フェオダリアが南大洋インド洋区季節海氷域の生物ポンプに果たす役割の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
20H04984
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Research Institution | Marine Ecology Research Institute |
Principal Investigator |
池上 隆仁 公益財団法人海洋生物環境研究所, 海生研中央研究所, 研究員 (70725051)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | セディメント・トラップ / 炭素循環 / ケイ素循環 / フェオダリア / 放散虫 / 凝集体 / 珪藻マット / 南大洋インド洋区 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海洋炭素循環においてこれまで見過ごされてきたフェオダリアについて、南大洋インド洋区生態系における役割及び生物ポンプへの寄与を評価し、同海域の生態系全体の動態解明に貢献することを目的とする。 沈降粒子試料についてほぼ分割作業を終え、南極前線南側周辺海域の測点ECR-1の試料の>1 mm分画のソーティングを進めた。ソーティングの結果、測点ECR-1における>1 mm分画の主要な構成粒子は珪藻Thalassiothrix属の個体群とその凝集体であることが分かった。その他の構成粒子はフェオダリア骨格、動物プランクトンの遺骸、魚鱗等であった。Thalassiothrix属は夏~秋に多く、冬~春には、ほとんど観察されなかった。フェオダリアは一年を通して観察されたが、ほとんどは骨格のみで原形質は沈降途中で捕食または分解されていると考えられた。古海洋班の<1mm分画沈降粒子の化学分析結果及び予察的な検鏡結果も考慮すると測点ECR-1ではThalassiothrix属が炭素・ケイ素循環に重要な役割を果たしていると推察された。2020年に季節海氷域で採取したプランクトン試料についてはDNAメタバーコーディングの予備実験を行い、その成果を2021年3月に日本海洋学会の海洋生物シンポジウムで発表した。 また、他の海域と比較することで、南大洋のフェオダリア・放散虫の生態系・物質循環における位置づけを明らかにするため、北極海の沈降粒子試料、堆積物コア試料及び北太平洋の沈降粒子試料についても分析を行った。北極海については、スイス連邦工科大学との共同研究により堆積物コア中の放散虫Amphimelissa setosaの産出量がIRD(海氷が沿岸域から外洋に運ぶ砂や礫)、海氷付着珪藻に由来するIP25と高い相関があり、海氷分布や海氷縁の生産量の指標となることを明らかにし、共著論文として国際学術誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による作業人数の制限等のため、沈降粒子試料の分割作業が当初の予定よりも遅れてしまった。しかし、2020年度にソーティングを進めた南極前線南側周辺海域の沈降粒子試料中にThalassiothrix属の凝集体が観察され、海域による>1 mm分画の構成粒子の違いが明らかになるなど新しい知見が得られた。これにより古海洋班、生態系班との連携にも新たな展開が生じ、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度までにほぼ分割を終えた沈降粒子試料についてソーティングと化学分析を進める。南大洋インド洋区において沈降粒子試料を採取した測点は南極前線南側周辺海域、ケープダンレー沖の南極底層水形成域、東経110度線の季節海氷域の3海域に分けられる。南極前線南側周辺海域の測点ECR-1では、沈降粒子を構成する主要な粒子が珪藻Thalassiothrix属とその凝集体であることが明らかになったため、これらが生物ポンプに果たす役割を有機炭素量及び生物源オパール量として定量化する。ケープダンレー沖の南極底層水形成域の測点W2では>1 mmの粒子がほとんど含まれていなかったため、<1 mm分画のフェオダリアに着目した群集解析を行う。東経110度線の季節海氷域の測点については、>1 mm分画にフェオダリアが豊富に含まれていることが分割作業の過程で明らかになったため、当初の計画通り、顕微鏡観察によりフェオダリアの群集組成を明らかにするとともに、沈降粒子中のフェオダリアの有機炭素量を測定し、生物ポンプに対する寄与を定量化する。南大洋インド洋区で採取したプランクトン試料については、フェオダリアの鉛直分布、バイオマスを明らかにするとともに、褐色体のDNA分析を行い、フェオダリアの餌資源の組成を定量化する。また、他海域とのフェオダリアの餌資源の比較のため、日本沿岸でプランクトン試料を採取予定である。
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Remarks |
池上隆仁 (2020). フェオダリアが西部北太平洋の海洋炭素循環に果たす役割の定量評価.海生研ニュース, 146, 7-8 https://www.kaiseiken.or.jp/publish/news/lib/news146.pdf
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Life on the ice-edge: Paleoenvironmental significance of the radiolarian species Amphimelissa setosa in the northern hemisphere2020
Author(s)
Hernandez-Almeida, I, Bjorklund, K. R, Diz, P, Kruglikova, S, Ikenoue, T, Matul, A, Saavedra-Pellitero, M, Swanberg, N
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Journal Title
Quaternary Science Reviews
Volume: 248
Pages: 106565~106565
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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