2020 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding Intention Recognition of Non-verbal Action with Latent Hierarchy
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
20H04994
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
日高 昇平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (50582912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 身体運動 / 意図推定 / 階層性 / アニマシー知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
「(自分では手の届かない位置にある)塩をとれる?」「はい、どうぞ(塩入りの瓶を手渡す)」こうした何気ない日常会話に、相手の“意図”を汲み、その未達成の“意図”を手助けする行為が含まれている。なぜ、字義通り(locution)の答え(「塩とれる?」に「はい、塩とれる。」)ではなく、他者の満たしたい欲求(illocution)を自然に推論できるのだろうか。こうした文に直接表れない意図・意味は発語行為論で分析され、(必ずしも言語的でない)背景知識が必要であるとされる。実際、人は発達初期から、他者の行動を観察から“意図”を推定できる。 他者行動の観察からその“意図”を推定するためには、どのような機序が必要だろうか。本研究では、非言語的行為に潜在する意図推定の計算論的メカニズムの解明を目的とし、運動における「意図性」と「階層性」の関係を捉える計算モデルの構築を行った。 2020年度の研究では、動きに潜在する「意図性」の特性・要因を定量化するために、1つまたは2つの点列の動きを提示されたときに人が知覚する意図性や生物性、随伴性についての認知心理学的実験を行った。この実験では、点列の間の相関係数やグレンジャー因果量などの統計量を統制し、これらの動きの統計的性質と人の知覚する随伴性・意図性・生物性との関係を分析した。この分析結果から、随伴性、意図性や生物性はそれぞれ異なる動きの統計的性質と関連することが示唆された。 従来の研究では、意図を持つ主体の動きには生物性を知覚しやすい、あるいは追従性の動きを指す随伴性が高い場合には生物性を知覚しやすい等の知見が示唆されてきた。これに対し、本研究で行った実験結果は、これらの3つの性質がそれぞれ異なる統計的な性質と関連しており、またそれらは相関とグレンジャー因果量などの独立に定めうる統計的性質に切り分けて特徴づけられることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的とする運動から推定する非言語的な意図推定をするにあたって、人の知覚する意図性や生物性と運動の各種の統計量との関連付けを得ることが本質的である。2020年度の研究では、統制された運動刺激を用いて、それに対する人の意図性・生物性知覚の実験を行い、その基本的な構造をおおむね特定できた。加えて、本研究では、相関とグレンジャー因果量とを独立に統制した刺激を用いる実験枠組みを設計した。これは、主に「アニマシー(生物性)知覚」と呼ばれる当該分野で、先行研究で用いられてきた実験枠組みではこうした統計的性質を分離していなかった点を考慮すれば、方法論的な新規性も高い実験枠組みだと考えられる。 以上のとおり、当初予定していた意図性にかかわる動きの特徴量の特定のみならず、それを系統的に分析するための新たな実験の枠組みの開発までが達成できた点を考慮して、当初の計画以上の進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発した実験枠組みを用いて、より大規模なデータを取得し、精度の高い分析結果を得る方向で研究を進めていく。「意図性」に関する研究はおおむねこの方向で研究を進めることで、計画通りの研究の達成が見込まれる。一方で、「階層性」については、実験刺激の統制・設計をする計算モデルの開発の途上で、新たな構想が生まれており、これを基に研究を進めることで、研究のさらなる発展が見込まれる。
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