2020 Fiscal Year Annual Research Report
対話行為(発話意図)を表す機能語の獲得と進化の構成的理解
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
20H05004
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡 夏樹 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (20362585)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語発達 / 発話意図 / 深層強化学習 / self-attention / 機能語 / 助言 |
Outline of Annual Research Achievements |
対話行為を表す機能語の進化・獲得のメカニズムを構成的に理解することを目指し、以下の研究を行った。 1.発話意図を表す機能語獲得を自動的な処理としてモデル化 言語と画像に加えて主観的感覚(今年度取り上げたのは、欲求、内受容感覚、味覚、心的態度(推量))も入力とするself-attentionモデルであるSubjective BERTを提案し、機能語(「よ」「ね」のような終助詞や「そうだ」のような助動詞)の意味獲得を試みた。その結果、「おいしいよ」という相手の発話に対しては、一定の条件下で次の時刻でのおいしいという感覚が予測されるが、現時刻の同感覚は伴わないことが学習され、一方、「おいしいね」という入力に対しては、一定の条件下で現時刻のおいしいという感覚が想起できるが、次時刻の同感覚は必ずしも伴わないことが学習された。この結果は、終助詞「よ」で表現された対話行為(情報を伝える)や、「ね」で表現された対話行為(同じ感覚を持っていることの表明を求める)に即した情報処理ができるようになったことを示しており、対話行為を暗黙的に理解できるようになったと言える。次に、助動詞「そうだ」については、「おいしそうだ」が他の感覚からの味覚の推測であることを学習できたと解釈できる結果を得た。 2.対話行為を表す機能語の進化モデルのうち、親から子への助言を利用した強化学習モデルの構築 ビデオゲーム(ブロック崩し)を、助言付きで学習するモデルを構築した。助言はゲーム操作の指示と、実行した操作への評価の2種類の対話行為を含むものとした。ゲーム画面と助言を合わせたものを状態として、各状態に対する適切な行動(ゲーム操作)を報酬から学習した。ゲームの得点と助言から推定した報酬の合計を報酬とした。2種類の対話行為を含む言語を学習できると生存に有利である(環境に適した行動を速く学習できる)ことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の2点が明らかになり、言語獲得と進化の構成的理解に向けて、大きいとは言えないが必要なピースを埋めていくことに貢献したと考えている。 1)self-attentionにより、言語や視覚情報や主観的感覚の構成要素間に階層構造を形成することによって相手の発話意図を暗黙的に共有できることを示した。 2)2種類の対話行為を含む言語を学習できると生存に有利である(環境に適した行動を速く学習できる)ことを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】に記した2点の成果を土台に、次の通り研究を進める。 1)self-attentionのモジュールを、もう一つの自動処理のモデルである強化学習モジュール、および、後付け説明を担当する意識レベル処理のモジュールと組み合わせた統合モデルを構築する。 2)言語獲得エージェントのモデルに加えて、教える側のエージェントのモデルも構築し、さらに世代交代のシミュレーションも行うことにより、言語進化研究へと発展させる。 3)上記1)2)の両テーマに共通する今後の課題として、語彙を大規模化し、言語理解に加えて発話の学習も可能とする。
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