2020 Fiscal Year Annual Research Report
Developmental Support for Interactive Communication in Children with Autism Spectrum Disorder
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
20H05009
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 淳一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (60202389)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 発達支援 / コミュニケーション / 自閉スペクトラム症 / 意図理解 / 階層 / 言語発達 / オンライン行動発達支援 / 共創 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自閉スペクトラム症のある幼児・児童(以下、自閉症児)が、対人相互作用の中から言語・コミュニケーションの機能(意図理解)と構造(階層)を獲得し、拡張し、機能化させていく過程を明らかにすることを目的としている。発達支援を行いながらその効果を検証する臨床実験研究を通して、各発達段階に対応した「教える・教えられるという相互教育」「相互視点取得」「役割交代」などの促進条件を定量的に明らかにした。 自閉症幼児について、随伴模倣プログラムが動作・操作・音声の発達および対人相互作用を促進することを明らかにした。また、時間当たりの模倣機会数を増やすことで模倣と対人相互作用が促進されることを明らかにした。有意味語発話の生起頻度が年齢に比して低い自閉症児の音声模倣を促すには、支援者が発声・発話の機会設定を行った上で、表出された発声・発話や音声模倣に随伴模倣を行う手続きが有効であることが示唆された。 学齢期の自閉症児については、言語スキル(理解、表出)を獲得しているにも関わらず、学校という実際の環境で、言語・コミュニケーションスキルを活用することが難しかった。そこで、実際に遭遇している現実的な社会的場面を設定し、その状況下において適切なコミュニケーション行動を獲得するための社会スキル訓練プログラムを作成した。開発したプログラムをクラウドにアップロードし、保護者がダウンロードして家庭で実施し、その様子を撮影した動画を保護者がクラウドにアップロードし、支援を進めるオンライン行動発達支援方法を開発した。週1回、オンライン会議システムでその効果を、実験者が評定した。その結果、「自然な会話をする」「予期せぬ事態に対応する」「文脈を読み取る」「相手に教える」という共創言語・コミュニケーションスキルが獲得された。家庭支援は、保護者の満足度が高く、負担度が低いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
随伴模倣が、自閉症児の言語・コミュニケーションの促進に効果をもつことを明確にした点が、大きな成果である。随伴模倣では、研究者が自閉症児の注意を引き、モデルとなる発話を提示した。自閉症児の発声・発話や音声模倣が生起したら、研究者は即座に随伴模倣を行う。このような手法の有効性が検証されたことは、対人相互作用の基礎研究としての意義も大きい。また、保護者セッションにおいても介入効果が維持されたことは、家庭でも日常的に実施できる共創コミュニケーション方法として活用できることを示したこととなり、大きな成果である。本論文は、2本の審査のある学術誌に掲載された。 新型コロナウイルス禍の感染拡大によって、教育と発達支援活動が制限されることが現実的に起こった。そのため、家庭で実施でき、子どもの発達促進をもたらす介入方法を明らかにすることが、喫緊の課題となった。クラウドサービスに、5、6日分の家庭トレーニング用教材を週1回の頻度で配信し、家庭では、週4日程度実施するように依頼し、1日1課題(5問)を実施する研究パラダムを構築できた点が、大きな成果となった。また、iPod touchを用いて課題遂行の様子を動画で撮影するよう求めた。撮影した動画は、AirDrop機能を使ってiPod touchからiPadへ転送し、iPadからクラウドサービス「Box」へアップロードすること、研究者にその旨をメール連絡するよう求めた。パスワード管理のもと保護者と研究者がデータを共有できた。週1回のZoomでのプローブ試行では、研究者がプローブ用教材を用いた効果測定を個別に実施した。教材は、Zoomの画面共有機能を用い研究者のパソコンの画面を共有することで提示した。その様子は、Zoomの録画機能を使って録画した。この研究成果は、2本の論文として、審査のある学術誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
共創的コミュニケーション支援を、オンサイトのみならず、オンライン行動発達支援として実現できたことは、十分大きな成果であり、今後は、以下の点で、研究を発展させていく。 今後の研究は、子どもどうしのコミュニケーションの成立条件を明らかにすることである。特に、子どもどうしのコミュニケーションを生み出すオンライン行動発達支援の効果検証が課題である。現在、予備的研究成果として、オンライン上で、会話や順番交代のような2人が交互に言葉を使う行動についての相互作用のデータが得られている。一方、動作のタイミングを合わせる同期行動については、オンラインでは音声・映像のタイムラグがあること、映像で見える範囲が限られていること、などから、成立が難しく、今後の課題となっている。 大人を子どもに見立てたロールプレイ課題を設定し、オンラインでの会話、ペースを合わせながら同期させていく支援方法を開発し、ターン数、会話持続時間、相手の反応を引き出す言語(「質問」「あいづち」「終助詞」など)などが促進される条件を明らかにする研究を進めていく予定である
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Research Products
(3 results)