2022 Fiscal Year Annual Research Report
Brain Information Modeling for Active Communication through Language and Music
Publicly Offered Research
Project Area | Studies of Language Evolution for Co-creative Human Communication |
Project/Area Number |
20H05023
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
中井 智也 帝京大学, 先端総合研究機構, 研究員 (60781250)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 言語 / 音楽 / コミュニケーション / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、ヒトが言語と音楽を介してコミュニケーションを行う能力に関して、認知神経科学の視点からその脳神経基盤を明らかにすることである。その目的のため、令和4年度申請者は、前年までに得られた言語MRIデータの解析及び論文執筆を行なった。 6名の被験者に対し文章刺激をテキストまたは音声条件で与えた際の脳活動、及びテキストと音声を同時に呈示した際の脳活動データを利用した。文章刺激から自然言語処理モデルを用いて意味特徴量および音韻特徴量を抽出し、Ridge回帰により脳活動を入力として意味・音韻特徴量を出力する復号化モデルを構築した。さらに、特定のモダリティ(テキストもしくは音声)に注意が向いている際に意味特徴量のデコーディング精度が向上することを見出した。現在、その内容をまとめた論文を執筆中である。 また、以前発表したデータ(Nakai & Nishimoto, Nature Communications 2020)を再解析することにより、音楽・言語を含む100種類以上の大規模な認知課題が大脳皮質・小脳・皮質下において類似の活動パターンを示すことを明らかにし、また小脳・皮質下の脳活動から課題を読み取る復号化モデルを構築することに成功した。この成果をCommunications Biology誌に発表した(Nakai & Nishimoto, Communications Biology 2022)。 本年度はさらに、新学術領域「共創言語進化」において出会った若手研究者達との分担で著作『言語進化学の未来を共創する』(ひつじ書房)を執筆した。本書において2章分を担当し、これまで広く実施されてきた言語の脳地図研究、及び数認知における理論言語学の仮説を批判的に検討した論考を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は言語を介したコミュニケーションの定量的モデル構築として、当初予定していた符号化モデルを用いた研究を中断期間中に発表することができた(Nakai, Yamaguchi, Nishimoto, Cerebral Cortex 2021)。本年度はそこで、脳活動から特徴量情報を読み出す復号化モデルの構築に着手した。結果として、特定のモダリティ(テキストもしくは音声)に注意が向いている際に意味特徴量のデコーディング精度が向上することを見出した。この結果は当初の研究計画を拡張したものであり、また符号化モデルによる結果を補完するものであると言える。 本年度はまた共同研究として、脳の機能的結合の新たな解析手法としてExternal Stimulus Connectivityの指標を提案し、その指標を利用 した外発的刺激と内発的認知の脳活動における影響を定量的に分析した結果をNeuroImage誌に発表した(Dror, Nakai, Nishimoto, NeuroImage 2022)。さらに、音楽MRI研究(Nakai et al., Brain and Behavior 2021)において導入した、脳におけるカテゴ リー選択的応答を音響特徴量のカテゴリー間類似度で説明するBrain-Feature Similarity Analysisを数学問題実施時のMRIデータに応用し、その内容をNeuroImage誌に発表した(Nakai & Nishimoto, NeuroImage 2023)。これらの結果は本研究計画で用いる解析手法を応用することによって生まれた研究である。 以上により、本年度は当初計画していた以上の成果を出すことができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は2021年度に日本学術振興会海外特別研究員に採用されたため、「海外における研究滞在 等による科研費の研究中断」制度により本研究課題を一時中断し、中断期間に留学先であるリヨン神経科学研究センターにおいて5歳児及び8歳児を対象とした脳機能の発達研究を実施し、その成果をPLOS Biology誌に発表していた(Nakai et al., PLOS Biology 2023)。今後研究代表者は、留学先において学んだ低年齢被験者の脳機能解析技術を本研究課題に応用することによって、本研究課題の適用範囲を、当初予定していた成人からより幅広い年齢層の発達研究へと拡大することを予定している。発達の観点を取り入れることにより、本研究課題の成果を将来的に教育分野等へ応用する可能性が生まれ、より一般社会へ与える影響も大きくなることが予想される。 現在執筆中である、意味情報の復号化モデル構築及び注意の影響に関する論文は、引き続き執筆を進め、2023年度中に論文投稿・受理を目指す予定である。 その際、Nakai & Nishimoto (NeuroImage, 2023)において導入した深層学習モデルを利用した特徴量抽出法を応用し、言語および音楽情報においても深層学習モデルの利用の有効性を検討する。特にNakai & Nishimoto (2023)において用いたTransformerモデルは元来自然言語処理において開発されたモデルであり、本研究課題で用いている言語および音楽脳活動データの解析に有用であると考えられる。
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Research Products
(5 results)