2020 Fiscal Year Annual Research Report
脳梗塞時に発生する脳回路ダイナミズムの解明と記憶増強への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
20H05046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 広 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20435530)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2022-03-31
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Keywords | グリア細胞 / アストロサイト / 記憶 / 脳梗塞 / メタ可塑性 / リハビリ / 小脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞後には、リハビリの効果が高く、機能回復が促進される時期(sensitive period)がある。リハビリで期待されるのは、1)生き残った梗塞部周辺(ペナンブラ)での神経回路の再編が生じ、失われた機能をペナンブラの神経細胞が肩代わりするようになることと、2)ペナンブラの外の無傷の領域での可塑性の亢進により、超可塑性が実現し、例えば、従来利き手でなかった左手で字がかけるようになるなど、日常生活を送るための機能補償がされることである。どちらの場合も、脳の広範囲に可塑性の亢進が惹起されるが、この超可塑性の基礎メカニズムを明らかにすることで、効果的なリハビリへの応用が望める。梗塞初期には、酸素不足によるTCA回路の停止、および、乳酸の蓄積による代謝性アシドーシスが生じる。脳梗塞後、酸性化したバーグマングリア細胞からのグルタミン酸放出は、急性には、脳の破壊につながり、回復期においては、ペナンブラ、あるいは、遠く離れた部位にて、シナプス可塑性(LTD)が生じやすい状態(超可塑性もしくは易可塑性)を作ると考えられる。そこで、本研究では、Rose Bengal脳梗塞モデルを使い、慢性的な酸性化・乳酸供給が持続するかどうかを調べるため、自由行動下でのファイバーフォトメトリー法を開発・改良をした。また、小脳依存性の水平視機性眼球運動(HOKR)学習をひとつのモデルとして、グリア細胞をターゲットにした光操作による介入も試みた。さらに、グリア細胞からのグルタミン酸放出を担う分子機構をノックアウトすることで、学習・記憶に対する影響を調べた。本研究により、脳梗塞時に生まれる超可塑性の機序を明らかにできれば、これを模擬する光操作法、および、非侵襲的刺激法を工夫することで、老齢マウスの認知症治療も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当研究室を含め、ファイバーフォトメトリー法により脳内情報を光計測する方法は広く実施されているが、蛍光シグナルを読み解く解析方法に大きな進展がいくつもあった。これにより、ひとつの蛍光センサーを使うだけでも、多くの脳内情報を引き出すことが可能となった。さらに、当研究室では、複数の蛍光センサーを発現する遺伝子改変マウスを開発してきたので、これらを用いることで、脳内情報を多変量的に解析することが可能となった。また、光操作やノックアウトによる学習への介入も可能であることも明らかになった。計測と操作を両輪として、学習や記憶の基本メカニズムを明らかにするに留まらず、脳梗塞等の病態時に、このメカニズムがどのようにシフトするのかを解明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、グリア細胞が支配するメタ可塑性の原理を解明し、これを制御することを目的とする。まず、Rose Bengal法を用いて、局所的な人工脳梗塞モデルを作製する。梗塞部位、ペナンブラ、対側へと、どのようなタイムコースで異常事態が伝えられていくのか、主にグリア光計測法を用いて調べる。特に、本来、無傷のはずの対側に伝わる信号、および、それによってもたらされるシナプス伝達の超可塑性を、急性スライス標本を用いたパッチクランプ実験によって確認する。さらに、グリア細胞内pHを光操作する方法を用いて、脳梗塞時のグリア反応を模擬。この時、シナプスに生まれるメタ可塑性を調べることで、脳梗塞時の超可塑性応答の機序を明らかにする。続いて、グリア機能賦活化を経由して、神経機能を向上させることができるかどうかを検討する。老齢マウスを用いて、認知機能の低下を各種行動課題によって確認。脳梗塞時におきる超可塑性と類似した機能向上が、グリア機能の賦活化によってもたらされるかどうかを検証する。
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[Journal Article] Intracelltoular ATP levels in mouse cortical excitary neurons varies with sleep-wake states2020
Author(s)
Akiyo Natsubori, Tomomi Tsunematsu, Akihiro Karashima, Hiromi Imamura, Naoya Kabe, Andrea Trevisiol, Johannes Hirrlinger, Tohru Kodama, Tomomi Sanagi, Kazuto Masamoto, Norio Takata, Klaus-Armin Nave, Ko Matsui, Kenji F. Tanaka & Makoto Honda
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Journal Title
Communications Biology
Volume: 3
Pages: 491
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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