2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規単シナプス性感染伝播ベクターを利用した神経回路選択的な活動計測・操作法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
20H05062
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 謙一 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (90455395)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / バイオテクノロジー / ウイルスベクター / 逆行性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外来遺伝子発現を長期間持続できる低細胞毒性型の伝播能欠損型狂犬病ウイルス(RV)ベクターを開発することにより、特定の神経回路のみの神経活動計測・操作をげっし類および霊長類で実現することを目的とする。今年度は、研究代表者らがこれまで開発してきた、高い逆行性感染効率と外来遺伝子発現効率を併せ持ち、かつ細胞毒性が低いことを特徴とするCVS株由来の改変RVベクターをさらに改変することにより、複数の低細胞毒性型の伝播能欠損型RVベクターを開発し、またその高力価ベクター調製法を確立した。マーカー遺伝子としてGFP遺伝子を挿入したこれらの感染伝播能欠損型ベクターをラットに注入し、生存期間を振った(最大半年)後に還流固定を行なって、組織学的解析によりin vivoでの発現量、発現期間、細胞毒性などを検証したところ、従来と比べて低い細胞毒性を示すベクターを得ることが出来たが、一ヶ月以上では細胞毒性が観察されるなど十分ではなかったため、更なる改変を行って、in vitroの系においてより低細胞毒性化した伝播能欠損型RVベクター候補を得た。また高力価ベクター調製法をさらに改良し、低増殖型のベクターでも十分な力価を得ることに成功した。今後これらの候補ベクターをラットに注入してin vivoでの発現量、発現期間、細胞毒性などを検証し、最終的に数ヶ月以上生理機能を保ちつつ外来遺伝子発現を持続するベクターを確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究の目的および実施計画欄に記載した、高い逆行性感染効率と外来遺伝子発現効率を併せ持ち、かつ細胞毒性が低いことを特徴とするCVS株由来の改変RVベクターの開発について、一部想定外の想定外の結果が生じ追加の開発が必要となったもののおおむね順調に進行していると考えられる。今後候補ベクターの注入を実施し解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展していると考えられるため、今後も当初予定に従い、まずこれまでに得られた候補ベクターをラットに注入してin vivoでの発現量、発現期間、細胞毒性などを検証し、最終的に数ヶ月以上生理機能を保ちつつ外来遺伝子発現を持続するベクターを確立する。また、同ベクターを霊長類に注入することにより感染・発現特性が変わらないかの検証をおこなう。 次いで、上記研究で選択されたベクターにカルシウムプロープ遺伝子やオプシン遺伝子を挿入したベクターを作成し、高力価ウイルス液をマウスまたはラットに注入することで、開発したベクターが数ヶ月以上にわたって生理機能を保有しつつ外来遺伝子発現を持続できるかについて光操作系やカルシウムイメージング系で評価する。また、ベクターシステムの発展系として、特定ニューロン種および同ニューロン種に入力を送るニューロン群のみに神経活動分子センサーを発現させ、これらのニューロン群のみから長期間活動を記録する手法を開発するとともに、同手法を同一個体で複数のニューロン種に適用出来るようなシステムの開発も試みる。
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