2020 Fiscal Year Annual Research Report
悲観的な価値判断を引き起こす霊長類側坐核-ドーパミン経路の機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
20H05063
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
雨森 賢一 京都大学, 高等研究院, 特定拠点准教授 (70344471)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 霊長類 / DREADD / 不安障害 / 意思決定 / 線条体 / 腹側被蓋野 / 接近回避葛藤 / 化学遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、不安障害や鬱病に因果的に関わると考えられる神経回路が、大脳辺縁系-基底核に広く分散して存在することがわかってきた(Amemori and Graybiel, 2012; Amemori et al., 2018; Amemori, et al., 2020; Ironside et al., 2020)。 この「不安回路」の下流域には、側坐核があり、ドーパミン (DA) 回路に直接的・間接的に投射している。 このことから我々は不安障害や鬱病に伴う罰の過大評価はDA 制御の異常によって引き起こされるという仮説を立てた。本研究では、側坐核-DA の直接経路と、側坐核-腹側淡蒼球-DA の間接経路に焦点を当て、化学遺伝学による経路選択的な活動制御技術を確立させ、罰の価値判断や「不安」の生成に因果的に関わることを示す。このため、不安行動を定量化できる接近回避の意思決定課題をマカクザルに訓練し、①側坐核、腹側淡蒼球、DA細胞から課題関連活動を記録し、意欲、期待効用、葛藤なをどのように表現するかを解明する。②順行性に発現する化学遺伝学ウイルスを側坐核に注入した後、投射先の腹側被蓋野に作動薬を注入することで、側坐核-DAの直接経路を賦活・抑制し、価値判断の変化を調べる。さらに、直接経路の操作によりDA細胞の課題応答がどのように変化するかを調べる。③間接経路である側坐核-腹側淡蒼球-DA 経路の機能を調べるため、課題遂行中のサルの腹側淡蒼球に作動薬を局所注入することで、間接経路を操作し、葛藤課題への影響とDA細胞の応答の変化を調べる。このように、側坐核を中心とした局所回路が、どのように DA 応答を制御し、どのように「不安」状態が引き起こすのかを、ヒトと相同な脳構造を持つ霊長類において包括的に明らかにし、精神障害の治療につながる神経操作技術の確立に寄与する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究助成により実験環境が整い、1頭目の、側坐核の化学遺伝学による神経活動の制御と経路選択的な操作に実験を始めている。計画通りに研究が進んでいるといえる。また、昨年度は、これまで、蓄えてきた本研究課題と関連する研究成果を論文として発表することができた。線条体ストリオソームに投射するpACC、cOFCの微小刺激が罰の過大評価を引き起こすことを発見し、EJNに発表した。また、ヒトとマカクザルの接近回避葛藤におけるpACCの神経応答が相同であることを発見。ヒト側坐核が、うつ病によって葛藤に対する応答が低下することを発見し、Biol. Psychiatry誌に発表した。特にこの研究は、ヒトとマカクザルの側坐核活動が接近葛藤と接近接近の葛藤を同じように区別することを発見し、ヒト側坐核が、うつ病によって機能低下することを示すもので、化学遺伝学によりマカクザルでうつ病モデルを作成する現在行っている研究を補うものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
葛藤下の意思決定の脳情報動態を調べるため、霊長類前帯状皮質膝前部(pACC)と前頭眼窩皮質後部(cOFC)に始まる大脳皮質ー大脳基底核の多領野の並列処理に着目し、この並列回路が葛藤下の意思決定に因果的に関わり、不安障害、うつ病、強迫性障害の責任領域となりうることを、ヒトMRI、サル単一細胞記録法、サル機能解剖学、サル電気刺激法、サル化学遺伝学法などを用いて調べていく。特にサルの側坐核の化学遺伝学による操作と、経路選択的な操作が実現しつつあるため、引き続き実験を進める。
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Research Products
(8 results)