2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the neural basis for the dynamic change of taste preference
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
20H05069
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
相馬 祥吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00723256)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 味覚嗜好性 / 島皮質 / 扁桃体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本来、味に対する好き嫌いのパターン(味覚嗜好性)は、味覚システムの既定された神経回路により生得的に決まっている。しかし、これは永続的なものでなく、生後の経験や学習に依存して動的に変化する。例えば、ある食物を摂取後、内臓不調により不快に感じると、その食物を忌避するようになる。このような学習はガルシア効果、または味覚嫌悪学習として知られる。この学習は、有害な物質を何度も摂取することで生存が脅かされないようにするための機能であり、食物の好き嫌いを形成する神経機構のモデルと考えられている。味覚嫌悪学習の成立には味覚神経回路の情報と内臓感覚神経回路の情報が扁桃体で統合されることが重要であるとされているが、その神経機序はいまだに未解明のままである。 味覚嫌悪学習は、①食物の摂取から有害刺激の呈示までの遅延時間が2時間以上に及んでも学習可能である、②1回の経験で学習が成立する、③消去抵抗が極めて大きい、などの特徴を持つ。これらの迅速かつ強健な特徴は、条件-無条件刺激の対呈示の時間制約が厳しく、試行の繰返しを必要とする古典的条件づけとは大きく異なり、味覚嫌悪学習の神経機序を解明することは学術的に非常に重要である。また、味覚嫌悪学習はヒトにおいても多数報告されており、特にガン治療(化学療法や放射線療法)を受けている患者に見られる食欲不振が味覚嫌悪に起因しており、臨床医学的に大きな問題となっている。さらに、我々の普段の食行動においても、味覚嫌悪学習が食物に対する好き嫌い形成の一因として作用することが報告されているなど、味覚嫌悪学習の神経機序を解明することは心理学的、生物学的、神経科学的のみならず、臨床医学的にも非常に価値が高い。そこで、本研究では味覚嫌悪学習の成立により「甘味+快情動」であった情報が「甘味+不快情動」へと情報変換される神経基盤の解明を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
島皮質は動物の味覚経験に基づいて迅速かつ大規模な可塑的変化を起こすことが知られており、その役割を果たすために味覚・体性感覚・嗜好性などの様々な情報を複数の脳領域から受けるハブとなっている。この複雑な神経回路を持つ島皮質において味覚応答性細胞が味覚経験に基づいてその性質を変化するメカニズムを解明するためには舌由来の情報を受け取る味覚応答性細胞を同定し解析する必要がある。これを実現するために、申請者は舌の味細胞に光駆動性陽イオンチャネルであるChR2を発現させ、光遺伝学・電気生理学的手法により舌からの情報の流れを追うことで味覚伝導路に属する細胞を同定する手法の構築に取り組み、これに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度において味覚伝導路に属する神経細胞を同定する手法が脳幹において機能することを確認できたため、本年度は島皮質においても同様の実験・解析を行い島皮質内での味覚応答性細胞の同定を試みる。その後、味覚嫌悪学習前後におけるこれら味覚応答性細胞の性質を調べることで味覚嫌悪学習の成立メカニズムの解明を試みる。
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