2020 Fiscal Year Annual Research Report
Optical and machine learning based approach to understand neural computation underlying fear memory
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
20H05076
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
揚妻 正和 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特任准教授 (30425607)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 二光子イメージング / population coding / 恐怖条件付け / 前頭前野 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス大脳皮質における「内側前頭前野(mPFC)」はヒトの前頭前野背外側部に相当し、報酬記憶・嫌悪記憶といった様々な情動に関する記憶の管理を担う。大脳皮質での情報処理では一般に、神経細胞集団は全体として精密に制御されなければならないことが示唆されている。しかし実際どのような制御が脳機能の達成に重要であるかについては、情報論的な概念や仮説が提唱されるにとどまっている場合が多い。研究代表者らはこれまで、2光子神経活動イメージング技術によりこの問題に着手し、さらに光遺伝学的な神経活動操作を同時に行う手法を確立することで、大脳皮質での神経集団による情報コーディング(population coding)の基盤について明らかにしてきた。本研究ではこれらの技術を応用し、擬似自由行動中のマウスにおける神経集団活動の経時的な計測と操作を行うことで、mPFCの神経細胞集団による情動記憶の情報処理基盤を解明することを目的としている。 過去の研究で、内側前頭前皮質(mPFC)の一部、前辺縁皮質(PL)では、学習依存的な恐怖反応に伴って、神経活動の変化が報告されている。そこで、深部2光子イメージングを行い、PLを中心とした神経活動観察を進めてきた。遺伝子コード型カルシウムセンサーの利用により、長期的に細胞を標識し、同一の神経細胞群における学習経過を通じた神経発火パターンの変化についてのデータ取得を実現した。本年度は、領域内の共同研究を推進し、ヘテロな情報をコードするmPFCから、恐怖反応をコードするアンサンブル(神経細胞集団としての活動)を特異的に検出した。さらに、数理学的なアプローチによりこの恐怖記憶アンサンブル検証を進め、その成立過程にかんする興味深い現象を検出している。並行して、そこから得られた仮説を検証するための光による神経活動操作技術の開発も終え、その性能評価とさらなる改良を推進している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2光子神経活動イメージング技術により、恐怖学習に伴う神経活動変化を多数の神経細胞から同時記録した。実際の恐怖学習のパラダイムとしては、音と嫌悪刺激の条件付けを行い、音を提示したときに見られる学習強度(すくみ反応の程度)、及び神経活動パターンの変化を比較した。この時、二種類の音を準備し、一方だけを嫌悪刺激と連合学習させる。そうすることで、学習前の両者の違い、学習後の両者の違い、そして学習前後の比較を行い、恐怖記憶に特異的なパターン、要素の同定を行った。遺伝子コード型センサーの導入により長期的に細胞を標識し、従来困難であった「同一の神経細胞における学習前後での神経活動パターンの比較」を実現した。実験は頭部固定中の擬似自由行動可能なマウスを用いて行い、恐怖条件付けという古典的な学習を行うマウスからの神経活動記録を進めることが出来ている。 更に上述の手法により得られた観察データをもとに、記憶コードに関する特徴抽出の手法確立と、それによる解析を目標とし、研究を進めてきた。学習の前、最中、及び学習後の記憶想起中のマウスでどのような神経活動や反応特異性が変化しているかについて検討を進めることができた。また、機械学習の専門家との共同研究を通じて、記憶との関連が想定されるアンサンブル(神経細胞集団としての活動)の検出にも成功した。領域内共同研究を通じて、学習過程で恐怖記憶アンサンブルが形成される機序についても検証した。 さらに、イメージングにより観察されたそれらの神経活動の意義、情動との関連性を検証するために、「今後の研究の推進方策」の項で述べるような「光遺伝学」により直接的に因果関係を調べるための顕微鏡も作製し、それによる実験に向けて準備を進めている。 これらのことから、次年度以降の展開に向けて、計画通り順調に進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は恐怖記憶アンサンブルの性質と形成機序に関する内容をまとめ、論文化を目指す。また、その「記憶」としての本質となる部分を数理学的に検証する。 そして、これら解析で得られた結果の因果関係を検証するために、光遺伝学による因果関係の解明について進める。光遺伝学的な手法により任意の神経活動パターンを作り、解析から見出した要素の重要性を直接的に検証する。以前の留学先であるYuste研で開発されたSLM技術(Nikolenko et al. 2007;Packer et al., 2014)を組み合わせ、操作標的細胞「パターン」を精密に再現して検証する。あるいは、PV陽性の抑制性神経が同期性制御を介してpopulation codingを制御することを踏まえ(申請者ら, 2017)、mPFCでのPV細胞特異的な活動抑制を通じてPV細胞・同期性の役割を検証していく。
|
-
-
-
[Presentation] 光と数理による恐怖記憶における前頭前野情報処理機構の解明2021
Author(s)
1.Agetsuma M., Sato I., Tanaka Y., Kasai A., Arai Y., Yoshitomo M., Hashimoto H., Nabekura J., Nagai T.
Organizer
第98回日本生理学会大会 / 第126回日本解剖学会総会・全国学術集会 合同大会、 シンポジウム「大脳皮質局所神経回路構築と学習記憶によるリモデリング」にて
Invited
-