2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of Brain Information Dynamics Mechanism Mediated by Structural and Functional Interactions between Claustrum and Multiple Cortical Areas
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
20H05078
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉原 良浩 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20220717)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前障 / 大脳皮質 / 徐波活動 / 意識 / トランスジェニックマウス / 光遺伝学 / 神経回路 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
前障(Claustrum)は哺乳類の大脳皮質の内側に位置する薄いシート状の構造であり、大脳皮質のすべての領野と双方向的に神経接続するというユニークな解剖学的特徴が報告されているが、その機能については全く解明されていない。これまでに前障の機能について、多種感覚情報の統合・選択的注意の割り当て・皮質オシレーションの制御・意識の中枢など、興味深い仮説が提唱されてきた。しかしながら前障の複雑かつ不規則な構造およびマーカー分子・遺伝子ツールの欠如などが障壁となり、これら仮説の実験的検証には未だ至っていない。私たちは最近、異なる3つのサブセットの前障ニューロンにDNA組換え酵素CreあるいはtTAを発現するトランスジェニックマウス系統(Cla-Cre#1, Cla-Cre#2, Cla-tTA)の樹立に成功し、前障ニューロンの遺伝学的可視化・活動制御が可能となった(未発表データ)。本年度においては、まずこれら3つのタイプの前障ニューロンが興奮性であるか、抑制性であるかを免疫組織化学により解析した。その結果、3つのタイプはすべてグルタミン酸作動性興奮性ニューロンであることが分かった。次にこれら3つのタイプの前障ニューロンと大脳皮質間の機能的結合の網羅的マッピングをアデノ随伴ウイルスを駆使して解析した。その結果、1)Cla-Cre#1マウスのCre発現前障ニューロンは大脳皮質の主に連合野領域と運動野領域に神経投射している、2)Cla-Cre#2マウスのCre発現細胞の軸索投射は前障内だけに限局している、3)Cla-tTAマウスのtTA発現細胞は連合野・運動野とともに感覚野に密な軸索投射をしている、という興味深い知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、3つのタイプの前障ニューロンがすべて興奮性ニューロンであること、さらにこれらの軸索投射パターンが異なることを見出すことができた。このように前障ニューロンサブセットと大脳皮質間の機能的結合のマッピングの一部が解明されたことから、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、改変型狂犬病ウイルス、逆行性感染型アデノ随伴ウイルスなどを駆使して、前障を起点とする神経回路の全体像の解明に挑む。また、前障ニューロンの活動制御による大脳皮質多領野間の情報動態・並列処理の変化の電気生理学的解析、高次脳機能を反映する行動課題における前障活動操作マウスの表現型解析、に取り組み、前障の機能解明の全貌に迫る。
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Research Products
(3 results)