2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of water-splitting dye-sensitized photoelectrochemical cell with multilayered charge-separation membrane
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
20H05082
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 厚志 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50437753)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 光触媒 / 水分解 / 色素増感 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では既存の水分解光触媒の活性を飛躍的に向上させる手法として、階層型光増感色素多層膜を半導体電極表面へ構築した、新しい水素生成光カソードおよび酸素生成光アノードの構築を目標に研究を推進している。研究初年度の主な実績は以下の通り。 【水素生成光カソードの開発】多孔質NiO/FTO電極に対し、Ru色素複層膜の形成に成功し、光電気化学特性を評価したところ、単層型光電極よりも顕著に大きな光電流が観測され、色素複層化が電荷分離に効果的であることを見出した。水素生成触媒となる白金コロイドや有機ポリマー触媒の担持も合わせて検討し、有機ポリマー触媒が効果的に色素層から電子を受容し、水素生成反応を駆動しうることを見出した。他方、同時並行で検討を進めている色素二層型ナノ粒子光触媒の開発において、Zスキーム型光触媒で多用されるヨウ化カリウムやコバルト錯体といった電子伝達剤を利用した光水素発生系の構築に成功し、その表面構造が活性を左右するという知見も得られた。本知見を水素生成光カソードへフィードバックすることでさらなる高活性化も期待できる。 【酸素生成光アノードの開発】TiO2多孔質電極に対してRu増感色素、プルシアンホワイト、プルシアンブルーからなるヘテロ接合の構築に成功し、電気化学的な酸素生成活性を有することを明らかとした。一方、正孔輸送層として導入したプルシアンホワイトに対し、Ru色素が正孔を受け渡すに十分な光酸化力を持っていない可能性が示唆された。この問題は当初から予想されたものであり、これを解決するべく、1:正孔輸送層をポリカルバゾール系有機層へ代替する、2:Ru色素の官能基修飾により光酸化力を増強する、等の打開策に着手し、アノード構築に必要な色素、正孔輸送剤、触媒の合成に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする水素生成光カソードは、色素単層型光電極よりも色素複層化光電極のほうが顕著に大きな光電流が観測されたことから、色素複層化が電荷分離に効果的であることが実証され、本研究の第一目標は実証できている。水素生成に必要な触媒についても、有機ポリマー触媒が効果的に色素層から電子を受容し、水素生成反応を駆動しうることを見出した。以上の知見から、色素層の厚みや触媒の担持方法について、今後詳細に最適化することで、より高活性な水素生成光カソードの開発が大いに期待でき、概ね順調に進展していると判断できる。 対極となる酸素生成光アノードについては、酸素生成に必要な過電圧を乗り越えられる色素、正孔輸送層、触媒の開発が研究進展における最大の障壁になっているものの、より強い光酸化力を有するRu色素の開発には目処が立ち、ポリカルバゾール系正孔輸送剤との連結についても、必要な構成素材は組み込み済みである。研究次年度においてこれらを組み合わせ、光アノードを構築することで本研究戦略の実効性は、確実に検証できる段階に到達している。 以上の進展を考えれば、当初予定していた計画からの大きな遅れはなく、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究次年度となる本年度は増感色素多層膜上に導入した電荷輸送層表層に、水の酸化還元反応を駆動する触媒機能を導入したヘテロ3接合型光電極を構築し、水分解色素増感光電気化学セルの創出を目標とする。 【水素発生触媒の導入】階層型光カソードに組み合わせる水素発生触媒としては高活性なPtナノ粒子や有機ポリマー触媒を用いて、ドロップキャスト法や蒸着法などにより効率的な電荷分離および触媒部への電子供給が実現できる組み合わせを精力的に探索する。各種表面分析や光電気化学測定を詳細に行い、光電極性能を評価しつつ、高活性化に資する知見を得る。 【酸素発生触媒の導入】階層型光アノードに適合する酸素発生触媒としては、正孔輸送層として用いるプルシアンホワイト類縁体PWAやポリカルバゾールと接合しやすいものを中心に検討する。具体的には、O2発生過電圧の小さなプルシアンブルー類縁体(PBA)触媒A[CoM(CN)6]や、ルテニウム錯体分子触媒Ru(bdc)(py)2などを配位結合や電解重合などを用いて固定化を試みる。作成した光電極は各種表面分析や光電気化学測定を詳細に行い、光電極性能を評価しつつ、正孔輸送層を導入した効果や触媒との組み合わせが与える影響を精密に評価する。
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