2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ammonia photosynthesis using photocathode under modal strong coupling condition
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
20H05083
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押切 友也 北海道大学, 電子科学研究所, 特任准教授 (60704567)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 強結合 / アンモニア / プラズモン / 光カソード |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度~2021年度は、プラズモン-ナノ共振器の強結合という新規の概念を導入した金ナノ粒子/酸化チタン/金反射膜光アノード(ATAアノード)を作製し、可視光照射下での光アンモニア合成効率を従来のプラズモン電極の2倍に増強した。 さらにこの強結合の概念をカソードに拡張し、金ナノ粒子/酸化ニッケル/白金反射膜からなる光カソード(ANP光カソード)を作製した。光学特性解析からANPカソードが強結合を形成することが明らかとなった。ANP光カソードを作用電極として3電極系で光電気化学特性を計測したところ、光電変換効率の作用スペクトルは極大波長(650 nm)で0.2%に達し、最長波長800 nmで光カソードとして動作することが明らかになった。ANP電極に410 nmより長波長の可視光を照射したところ、光照射時間に従って水素が発生し、水が電子アクセプターとなっていることが証明された。 また、ANP光カソードに生じるホットエレクトロンの消費速度を加速し、金ナノ粒子から酸化ニッケルへのホール注入効率を見積もるため、犠牲電子アクセプターとしてペルオキソ硫酸ナトリウムを系中に添加して光電気科学計測を行った結果、その内部量子収率は500-800 nmの可視光の広範囲でほぼ一様であり、平均して0.7%程度であった。これは既報のどのプラズモン光カソードと比較しても突出して高い値であった。実際、同様の方法で作製された強結合を形成しない金ナノ粒子/酸化ニッケル構造と比較して、ANP光カソードの光電変換効率は3桁大きかった。このことは、強結合形成によって金属からp型半導体へのホットホールの注入効率が著しく増大したことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の重要な研究課題は、(1)LSPRの光放射に起因するエネルギー散逸を抑制し、高効率に電子-正孔対を生成する革新的モード強結合プラズモン光カソードの構築、(2)モード強結合光カソード上の電荷移動過程の理解、(3)モード強結合アノード・カソードによる全可視光吸収二段階励起型光アンモニア合成系の構築、である。 【研究実績の概要】に記載したとおり、ANP構造を有する強結合光カソードを世界に先駆けて作製し、その結合制御因子を詳細に検討して強結合条件を達成し、可視光の広帯域・高効率な吸収を実証した。従って(1)については十分な進捗が見られた。次いで、ANP光カソードを作用電極として用いた犠牲電子アクセプター存在下での光電気科学計測から、その内部量子収率の作用スペクトルを取得した。犠牲試薬存在下では還元反応に伴う電子の消費速度が十分速いため、金属からp型半導体へのホール注入が反応律速となると推定される。従って、内部量子収率はホール注入速度を反映していると考えられる。ANP光カソードの内部量子収率の500-800 nmの平均値で0.7%であり、既存のプラズモンカソードと比較して著しく高いホール注入効率を示すことが分かった。さらに、その作用スペクトル形状は波長によらずほぼ一様であり、強い波長依存性を示した既報の強結合光アノードと比較して異なる特性を示した。これらの結果は(2)の強結合光カソード上の電荷移動過程の解明に向けた重要な知見である。(3)については強結合電極上でのアンモニア合成には成功しているが、二段階励起型の反応系については未実施である。 以上より、新型コロナウイルス感染症による影響による成果とりまとめの遅延を加味しても、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかとなった、プラズモン-ナノ共振器強結合光カソードの、結合制御因子に基づいて、結合強度を極限まで増大可能な光カソードの構築を目指す。さらに、強結合形勢下において金属からp型半導体へのホール注入効率が著しく増大するという実験事実を鑑み、強結合の結合強度や幾何構造がホール注入効率および電荷分離効率に与える影響について系統的に調査する。 特に、強結合カソードのホットホール注入増強機構にはプラズモン金属ナノ粒子の配列が重要であると考えられる。従って、粒子の配列を精密に制御可能な電子線リソグラフィ-リフトオフ法やナノインプリンを用いた構造作製を行う。ホール注入効率の評価については従来の光電気科学計測に加え、in situでの光分光電気化学計計測による金属中のキャリア密度評価、超高速分光によるホール注入の時間分解計測によって行う。また、電磁界シミュレーションによる近接場増強分布、スペクトルの側面からも強結合形成とホットキャリア生成の関係性について評価を行う。 作製した強結合アノード・カソードを用いて、可視光照射下での光アンモニア合成を行う。
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