2020 Fiscal Year Annual Research Report
光化学系IIの光阻害と修復の分子機構
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
20H05089
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
西山 佳孝 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (30281588)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2022-03-31
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Keywords | 光合成 / 光化学系II / 酸素発生 / 光阻害 / 修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学系II(PSII)は光による損傷を受けやすいが、修復機構によって速やかに修復される。研究代表者らは、これまでに光損傷に関する新たなモデル「Two-step説」を提唱し、修復を制御する新たな機構を見出してきた。Two-step説では、紫外線や青色光によって酸素発生系マンガンクラスターが損傷を受け(第一段階)、その後クロロフィルが吸収する可視光によって反応中心が損傷を受ける(第二段階)ことが推定されている。本年度は、Two-step機構の詳細および光損傷からの修復機構を明らかにするため、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の細胞に強力な紫外線(UV-A; 365 nm)を照射し、細胞を計時的にサンプリングして、酸素発生を指標にPSII活性を測定した。その結果、UV-A照射50秒後にはPSII活性は10%まで低下し、120秒後には完全になくなった。次にUV-Aを40秒照射した細胞を生育光(70 μmol photons m-2 s-1)下に移すと、PSII活性は徐々に回復し、60分後にはほぼ100%まで戻った。UV-A照射した細胞を暗所においても、PSII活性は徐々に回復したが、その回復速度は生育光下の約3割程度であった。しかし、UV-A照射した細胞をリンコマイシンの存在下においた場合、PSII活性は全く回復しなかった。以上の結果から、UV-A照射は短時間でPSIIに光損傷を引き起こし、照射後の細胞を弱光下に移すことによってPSIIは完全に修復されることがわかった。その際、タンパク質の新規合成が必要であることもわかった。また、PSIIは暗所でも遅い速度で修復されることから、酸素発生系の再構成は暗所でも起こることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、2020年11月に追加採択になった課題である。紫外線UV-Aによる光化学系IIの光損傷の効果や、損傷を受けた光化学系IIの修復を観察することができ、概ね当初の目標は到達できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は細胞からチラコイド膜を単離して、紫外線UV-Aによる光化学系IIの光損傷のメカニズムを詳細に解析する。またUV-A照射によって損傷したチラコイド膜に細胞成分を添加して、光化学系II活性の回復を解析する予定である。
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Research Products
(14 results)