2020 Fiscal Year Annual Research Report
天然光合成材料に学ぶ光学禁制遷移を介した近赤外光励起高効率二酸化炭素還元の実証
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
20H05091
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
八井 崇 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80505248)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近接場光 / 二酸化炭素還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、この非一様光場による二次高調発生(Second Harmonic Generation: SHG)を利用することで、近赤外光誘起による高効率CO2還元を実証する。非一様光場の励起源には、天然光合成材料である紅色細菌が持つ光捕集複合体LH2を利用する。近赤外光によって励起されるLH2は最低準位が光学禁制であり、近接場光と同じく双極子放射場を形成する。このため、光励起によって、空間的に非一様な電場が生じる。この非一様光場によるSH光の発生と同時に、SH光の取り出し効率を最適化するナノフォトニック集光体によって高いCO2還元効率が得られる。天然光合成材料と人工光合成材料を近接場光によって融合し、近赤外光誘起のCO2還元を実証することが本研究の目的である。 近赤外光誘起による高効率SHGを行うために、ナノフォトニック集光体に関する基礎研究を行った。ナノフォトニック集光体では、近赤外光を照射した際に、近接場光誘起のSHGを誘起し、高効率に紫外光を発生させるものである。ナノフォトニック集光体は大小二種類の量子ドットから構成される。その際、小さい量子ドットの基底エネルギーと大きい量子ドットの励起エネルギーが共鳴しているものを利用する。これを隣接して合成すると、小さい量子ドットで発生したSH光が大きい量子ドットにエネルギー移動を起こして集光されるので、高効率にSHGが実現する。 ナノフォトニック集光体の効率の最大化を図るため、レート方程式を用いて大量子ドットと小量子ドットの混合比についての解析を行い、その後量子ドットとして酸化亜鉛を用いて、量子ドットの混合比率依存性について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、近赤外光誘起による高効率SHを図るため、レート方程式を用いて大量子ドットと小量子ドットの混合比についての解析を行い、その後量子ドットとして酸化亜鉛を用いて、量子ドットの混合比率依存性について検討を行った。 大量子ドットと小量子ドットの個数の合計を10個としてレート方程式を用いて解析を行った。計算では、同じエネルギーレベルにあるものはすべて結合するとした。その後、混合比を変化させ、それぞれ緩和時間を求めた。その結果、小量子ドットの数が増えると緩和時間は増大した。この結果は、大量子ドットの個数に対し小量子ドットの個数が少ないと、大量子ドットの遷移が埋まってしまい、小量子ドットから大量子ドットへのエネルギー移動が制限されたことが原因かと思われる。 次にゾルゲル法を用いて大(直径4.5nm)・小(直径3.0nm)の酸化亜鉛量子ドットを作製した。得られた量子ドットに対して、波長325nmを用いて発光スペクトルを測定した。まず小量子ドット、大量子ドットのみのスペクトルを計測したところそれぞれ3.6、3.44 eV近傍にピークを持つスペクトルが得られた。次に大・小量子ドットの混合比を変えることでスペクトルを計測した。その結果小量子ドットの個数を大量子ドットの4倍として混ぜることで最も高い発光強度が得られることが分かった。また、小量子ドットの個数をさらに増やしたところ、発光強度の低減が見られ、これは、レート方程式の結果で見られた大量子ドットの準位が飽和したことによる効果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた結果を元に大小量子ドットと光硬化樹脂を混合し、光照射後に大量子ドットのスペクトル強度増大が最大となる量子ドットの割合を最適化する。ナノフォトニック集光体が動作していることを実証するために、ナノフォトニック集光体とRu錯体と結合させ、Ru発光強度が増大することを実証する。 さらなる高効率化のために、LH2を結合させることでRuの発光高度が向上することを実証する。 上記の実験を最適化することで二酸化炭素還元の高効率化の実証実験を行う。
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