2020 Fiscal Year Annual Research Report
有機ヒドリド供給能を有するユビキタス金属錯体の開発とCO2光還元システムへの展開
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of novel light energy conversion system through elucidation of the molecular mechanism of photosynthesis and its artificial design in terms of time and space |
Project/Area Number |
20H05095
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大津 英揮 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (80433697)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ユビキタス金属錯体 / NAD型有機ヒドリド / 人工光合成 / H2O酸化反応 / CO2還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「有機ヒドリド供給能を有するユビキタス金属錯体の開発とCO2光還元システムへの展開」では、生体内における補酵素NAD(Nicotinamide Adenine Dinucleotide)のNAD+/NADH型レドックス機能を範とした、地球上に多量に存在するアルコールや水を電子源として光エネルギーを化学的に(有機ヒドリド源として)貯蔵可能な新しいユビキタス金属(亜鉛(Zn))錯体を創出することで、光エネルギーによりZn錯体内に貯蔵された有機ヒドリドによる光駆動型CO2還元反応系の構築を目的としている。本年度は、NAD+モデル配位子であるpbn配位子(pbn = 2-(pyridin-2-yl)benzo[b][1,5]naphthyridine)を有する新規NAD+型Zn錯体([Zn(pbn)2(H2O)]2+)の合成および各種物性の解明をすることができた。さらに、水とほぼ同じ酸化電位を持つ脂肪族1級アルコールや2級アルコール(2-プロパノールや1-プロパノール)を電子源として利用することがわかり、370 nm以降の光をこのZn錯体溶液に照射することによって、2-プロパノールは2電子酸化体であるアセトンへ、1-プロパノールはプロピオンアルデヒドへと、それぞれ化学量論的(2-プロパノール:99.6%、1-プロパノール:99.0%)に変換でき、Zn錯体は還元され2電子還元種になることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規NAD+型Zn錯体([Zn(pbn)2(H2O)]2+)は、水とほぼ同じ酸化電位を持つ脂肪族アルコール(2-プロパノールや1-プロパノール)を電子源として利用する能力を持ち、本Zn錯体のCH3CN/2-propanol or 1-propanol溶液に370 nm以降の光照射すると、アルコールは2電子酸化体へと化学量論的に酸化され、Zn錯体は2電子還元種になることがわかった。しかし、2電子還元されたZn錯体は期待したNADH型ではなく、2つのpbn配位子同士がC-C結合した構造を有していることが明らかとなった。ただし、今後の研究の推進方策欄に後述するが、アルコールや水の酸化を伴ったNAD+からNADH型錯体への光還元反応(光エネルギーの有機ヒドリドとしての貯蔵反応)が達成できるよう工夫した新規配位子の合成はできており、今後この配位子を持つZn錯体の合成や各種分光学・光化学・電気化学的特性および反応特性の知見を得ることによって、本研究をさらに大きく進展させていく。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で得られた研究成果を基盤としながらも新規bbn配位子(bbn = 2-([2,2'-bipyridin]-6-yl)benzo[b][1,5]naphthyridine)を持つZn錯体を合成し、そのX線結晶構造解析をはじめ、各種分光学・光化学的性質や電気化学的特性および光エネルギーの有機ヒドリド貯蔵反応特性を検討・解明することで、光エネルギーにより有機ヒドリドを貯蔵したNADH型Zn錯体によるCO2還元反応の開発に取り組む。また、前年度に引き続き、得られた知見の学術論文発表や国内外での学会発表を行い、研究成果の積極的発信や深い議論・情報の収集に努める。
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