2020 Fiscal Year Annual Research Report
Materiality of urbanism in ancient Mexico: Dominating the space and the universe
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Human Historical Science of "Out of Eurasia": Exploring the Mechanisms of the Development of Civilization |
Project/Area Number |
20H05140
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
嘉幡 茂 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター, 客員研究員 (60585066)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メキシコ / トラランカレカ / テオティワカン / 古代都市 / ピラミッド / 認知考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、認知考古学の視点から、古代メキシコにおける古代都市の萌芽と発展を解明することにある。物質性と物質化を基にした空間支配の確立と拡大が、都市の興隆に必要不可欠であったとの仮説を検証している。メキシコ中央高原では、ポポカテペトル火山の大噴火(後70年頃)による社会の解体により、テオティワカンで都市化に拍車がかかり初期国家が誕生し、この地域に安定をもたらしたと指摘されている。しかし、都市国家としての基盤が未整備であったテオティワカン集落で、何故数多くの避難民を収容し養い得たのか。それは、テオティワカン盆地が肥沃な大地であり、近郊には黒曜石の原産地が存在していたからだと主張する。確かに、自然災害の影響を受けたことによって、より安全で資源の豊富な地域への移住というシナリオは理解しやすい。 しかし人々の意思決定はすべて自然環境に依存するという前提の下で論じられており、理論的な偏りが認められる。また、火山の近郊に位置するクイクイルコやトラランカレカも発展し都市化へと向かった。これは、大噴火による社会的混乱がテオティワカンの興隆のみによって収斂したのではなく、地域レベルで社会再編が行われていた証左であろう。 甚大な被害をもたらした自然環境に人々はどのように対応し、都市化を達成したのか。本年度は、トラランカレカ遺跡で実施した発掘調査のデータの精査から、この解明に努めた。当該遺跡の「大基壇(後100年頃建造)」は、内部に4時期の異なる建造物を内包する。「大基壇」よりも古い「建造物IV」の内部構造と建築資材(日干しレンガ)に大きな変化が認められた。地震に耐えうる固定荷重を考慮した内部構造の開発、そして、この強度を担保する日干しレンガの改良と大量生産が認められた。社会的混乱はピラミッドの強度化により収束へと向かい、さらなる都市化が達成されたのではないかとの仮説を提示することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
メキシコで考古学調査を行うには、メキシコ考古学審議会に研究計画書を提出し、許可を得る必要がある。しかしながら、コロナウイルスの影響により、当該審議会の定例会が開催されなかったため、当初予定していた研究活動を実施することができなかった。さらに、所属研究機関の方針により海外渡航が禁止されていたため、メキシコ現地での考古遺物の分析も行うことができなかった。この状況により、国内で文献研究を行い、本課題研究の目的の遂行に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
次の研究を進める予定である。 【計画1:古代メソアメリカ文明の世界観を復元する研究;方法①民族史学からの情報収集】 古代メソアメリカ文明の世界観を考察・復元する研究は、主に16世紀以降に記されたクロニカ、民族学、図像学、絵文書からのデータを基に、考古学データを援用しながら行われてきた。史料の存在しないトラランカレカ社会の世界観を考察する場合、民族史学からの復元研究は必要不可欠である。情報収集とその研究を実施する。 【計画2:泉と火山に物質性が付与され物質化された時期の解明;方法②発掘調査】 COVID-19が沈静化し渡墨可能であれば、トラランカレカ遺跡で層位学的発掘調査を行い、泉(水)と火山(火)の物質性を表す遺物や遺構の量的・質的変化に着目する。都市空間における物質化の実行には、シンボルの共有や社会の組織力が必要とされる。従って、これに関する遺構(ピラミッドなど)の登場前後(質的変化)、そしてある特定空間(祭祀施設など)における遺物の明確な増加(量的変化)の基準を設け、物質性の誕生時期を考察する。現在までの調査によって、遺跡の東に位置する湧水を中心に集落が形成され始めたことが判明した。この地区ではピラミッドが建造されており、その建造時期の確認と遺物の回収を目的に発掘調査を行う。火に関しては、この属性を持っているセロ・グランデ・ピラミッドで発掘調査を実施する。両地区のピラミッドの絶対年代を知るために、加速器質量分析法(AMS)を利用する。
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Research Products
(16 results)