2021 Fiscal Year Annual Research Report
分子ダイマーダイポールが創成する量子スピン/電荷液晶
Publicly Offered Research
Project Area | Physical Properties of Quantum Liquid Crystals |
Project/Area Number |
20H05144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子性有機導体 / 量子電荷液体 / 量子スピン液体 / ダイマーダイポール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,分子性有機物質である量子スピン液体k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3 とその周辺物質を対象として,スピン非秩序状態における電荷(ダイマーダイポール)揺らぎ-分子格子フォノン結合によるクラスター化・液晶化形成を低エネルギー分光手法により実験的に明らかにすることを目的としている.2021年度は,同物質に対する遠赤外-赤外反射分光手法により電荷揺らぎを反映する低エネルギー領域での光学スペクトル測定を行い,モット絶縁体状態であるはずの量子スピン液体状態において,明瞭な光学ギャップが開かずに電荷が揺らいだままである兆候が光学伝導度スペクトルに観測された.この結果は,本物質の量子スピン液体状態に特徴的な電荷揺らぎ(ダイマーダイポール)が励起スペクトルとして現れることを示している.この結果は,量子液晶の構成要素と考えるダイマーダイポールのゆらぎが量子スピン液体状態形成の要因である可能性を示すものである.この電荷状態については,分子格子との結合も合わせて考える必要がある.このため非弾性中性子散乱実験による格子ダイナミクス測定を計画し,中性子実験施設(グルノーブルILL,フランス)におけるリモート実験を国際共同研究として実施した.この結果,この物質で6K異常として種々の物理量に異常が観測される温度よりも高温側では,異常なフォノンダンピングが観測された.これはダイマーダイポールによる電荷揺らぎが格子と結合した結果を反映した現象と考えられる.一方で6K以下では,フォノン構造が明瞭になり,電荷揺らぎが凍結しフォノンとの結合が弱くなっていることを示唆する結果を得た.この観測は6K異常が非磁性低温秩序(VBS)相への相転移であるとする報告とも対応する.現在,理論研究者と微視的機構の検討を行いフォノン異常と電荷揺らぎ/スピン液体との相関についての論文を準備している.
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(11 results)