2020 Fiscal Year Annual Research Report
Interannual and decadal variations of the Kuroshio and their impacts on the sea surface temperature field
Publicly Offered Research
Project Area | Mid-latitude ocean-atmosphere interaction hotspots under the changing climate |
Project/Area Number |
20H05169
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 啓彦 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (50284914)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 黒潮 / 10年規模変動 / 経年変動 / PDO / アジアモンスーン |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の研究より、東シナ海の黒潮流路の長周期変動に連動して、東シナ海の大陸棚上の海水温が長周期変動するため、西日本の梅雨期の降水量が長周期変動する説が提案されている。しかし、1)東シナ海の黒潮流路の長周期変動を引き起こすメカニズム、2)黒潮流路変動が東シナ海の大陸棚上の水温変動を引き起こすメカニズムは示されていない。これら2つのメカニズムを解明するために、人工衛星海面地衡流速データ等の観測データ解析と東シナ海の黒潮流域での係留流速観測を実施する。 本年度は、上記1)に関連して2つの研究を実施した。 1―1)海面地衡流速データ(1993-2018)を用いて、黒潮・黒潮続流の全流路で、流路座標を用いて流速・流路の10年規模変動に関する時空間データセットを作成して解析した。その結果、黒潮・黒潮続流システムは3つのサブシステムで構成されていることが分った。さらに、サブシステムに跨る黒潮流速・流路の同期現象に着目して解析を進めた。その結果、全解析期間で黒潮続流と日本南岸の黒潮は太平洋10年規模変動に強制されながら逆位相で流速が変動すること、1993-2005年と2006-2014年の期間では、台湾沖から東シナ海の黒潮の流速・流路変動のメカニズムは異なることが分った。 1-2)北東アジアモンスーンの変動が東シナ海の黒潮の流速・流路変動に与える影響を調べるために、2020年6月の鹿大水産学部練習船「かごしま丸」の実習航海で、4台の超音波ドップラー流速計(ADCP 75KHz)を、韓国の研究グループとの国際共同観測の一環で、沖縄島西方の黒潮流域に設置した。これに関連して以前から実施していた、このプロセスの理論的基礎となる局所応答の力学仮説(研究代表者が提案している非線形エクマン・パンピング応答の力学)に関する研究の成果を、2本の論文に分けて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、2つの目的で構成される。1-1)人工衛星海面地衡流速データ等の観測データ解析より、夏季と冬季のそれぞれについて、黒潮の流況(流速・流路)の経年・10年規模変動の実態を明らかにする。1-2)その原因を遠隔応答と局所応答に関連付けて理解する。ここでは、東シナ海の黒潮流域で係留流速観測を行い局所応答の力学仮説(研究代表者が提案している非線形エクマン・パンピング応答)を検証する。2)このような黒潮の流況の経年・10年規模変動と、黒潮周辺の海面熱フラックスの変動とを合わせて、東シナ海の大陸棚の海面水温の経年・10年規模変動を形成するプロセスを理解する。 現在、1―1)と1-2)について、黒潮流速・流路の10年規模変動に関する解析が終了し、論文を投稿している段階である。また、1-2)について、東シナ海の黒潮流域で係留流速観測を実施中であり、かつ、局所応答の力学仮説を論文公表した段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の計画を実施する。 目的1-1の研究:昨年度、人工衛星海面地衡流速データ(1993-2018年)を用いて、黒潮・黒潮続流の全流路で、流路座標を用いて流速・流路の時空間データセットを作成した。そして、10年規模変動についての解析を終えた(現在、論文投稿中)。今年度は、主に台湾沖と東シナ海の黒潮の経年変動について、遠隔強制力(Pacific Decadal Oscillation)および局所強制力(夏季・冬季モンスーン)との関係を調べる。この研究は、6月上旬に開催されるJpGU-AGU joint meeting 2021、および9月に開催予定の2021年度日本海洋学会秋季大会で発表する。 目的1-2の研究:東シナ海の黒潮の局所応答の力学仮説(非線形エクマン・パンピング応答)を検証するために、2020年6月の鹿大水産学部練習船「かごしま丸」の実習航海で、4台の超音波ドップラー流速計(ADCP 75KHz)を、韓国の研究グループとの国際共同観測の一環で、沖縄島西方の黒潮流域に設置した。2021年6月のかごしま丸航海で、この係留系を回収・再設置する。今年度は、回収したデータを解析し仮説を検証する。この研究は、9月に開催予定の2021年度日本海洋学会秋季大会で発表する。 目的2の研究:東シナ海の海面水温変動が大気変動から影響されるプロセスと、黒潮の流路・流速変動から影響されるプロセスについて、量的比較を行う。今年度は初期的な解析を行い、その結果は来年度以降の研究に反映させる。
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Research Products
(5 results)