2020 Fiscal Year Annual Research Report
単一原子センサよる機能コアのサブオングストロームスケール物性評価
Publicly Offered Research
Project Area | New Materials Science on Nanoscale Structures and Functions of Crystal Defect Cores |
Project/Area Number |
20H05179
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮町 俊生 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (10437361)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 原子層 / 機能コア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の実験・計測技術の発展や計算科学の進歩にともない、革新的な機能性を持つ新規材料を創製するためには、物質表面および界面におけるナノ・原子スケールでの空間変調、即ち「機能コア」を制御することの重要性が明らかになってきた。本研究では原子分解能での構造観察のみならず、電子状態をスピン・電子軌道毎に分解して評価可能な走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて原子層物質表面上の機能コアの発現機構をサブオングストロームスケールで解明することを目的とする。研究対象として次世代エレクトロニクス材料として基礎・応用の両面から研究が精力的に進められている窒化鉄原子層および酸化マグネシウム原子層表面に機能コアを作製し、その物性をスピン・電子軌道分解STM観測および単一原子センサを利用してサブオングストロームスケールで評価する。
本年度は窒化鉄原子層機能コアの作製法の確立および物性評価を行った。まず、銅単結晶Cu(001)上に窒化鉄単原子層を作製し、原子分解能でのSTM構造観察により表面上に点欠陥が現れることを明らかにした。点欠陥周りのサブオングストローム分解能STM分光測定を行った結果、点欠陥が第3近接原子程度まで表面電子状態を変調させていることがわかった。第一原理計算との比較から原子欠陥近傍における窒化鉄単原子層の磁気モーメントの増大が示唆される。次にCu(111)上に窒化鉄単原子層を作製し、結晶格子が準安定な三角格子を持ち、さらにモアレパターンが生じることがわかった。観測されたモアレパターンの局所的なずれをSTM構造観察によりサブオングストローム分解能で評価することで、5 pm程度の局所ひずみが窒化鉄単原子層に生じていることを実験的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目的は窒化鉄原子層および酸化マグネシウム原子層表面上に機能コアを作製する方法を確立することであった。しかし、窒化鉄原子層機能コアの作製方法確立後、本研究に使用する極低温STM装置が故障し、修理およびメンテナンス・調整して研究計画を変更する必要が生じた。さらに、機能コアの物性を解明するためのセンサとして利用する磁性単一原子を作製するための蒸着機構に不具合が発覚したため、電子ビーム蒸着源周りやSTM装置の関連部の改良を行った。本年度後半にSTM装置の修理および電子ビーム蒸着源の改良が完了し、極低温その場蒸着によりCu(001)上の窒化鉄単原子層にCo単一原子が作製できていることをSTM原子分解能構造観察および分光測定から確認することができた。窒化鉄原子層の研究成果については国内学会で発表を行い、学術雑誌に論文発表した。STM装置および電子ビーム蒸着源の修理・改良と並行して原子層を中心とした関連物質の研究を進め、これらの研究成果についても国内学会で発表を行い、学術雑誌に論文発表した。また、並行して極低温・強磁場中環境下で動作可能なジュール・トムソン型STM装置の建設・整備を進めた。今年度はより低ノイズ環境でのSTM測定を可能にする、高剛性架台およびアクティブ除振システムの設計、性能シミュレーションを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はSTM装置や単一原子作製に必要な電子ビーム蒸着源の故障・不具合が見つかり、修理・整備を行う必要が生じた。今年度後半にSTM装置の修理および電子ビーム蒸着源の改良を終え、STM装置の正常動作および電子ビーム蒸着源による磁性単一原子作製に成功しており、次年度は窒化鉄原子層および酸化マグネシウム原子層上の磁性単一原子のSTM観察を行う。
まず、作製法を確立した窒化鉄原子層表面上の機能コアのSTM分光測定を行い、その電子状態および周辺原子への近接効果を原子スケールで解明する。機能コアの機能性の空間伝播の詳細は研究代表者らが実験的に実証したSTMの軌道選択性 [PRL 116, 056802 (2016).]を利用し、STM探針-試料表面間の距離を精密制御して形状像や分光スペクトルに現れる変化をサブオングストローム分解能で調べる。STM探針を機能コアへ徐々に近づけていき、優勢なトンネル過程がsp軌道からd軌道に変わった際に表面状態密度に現れる変化をSTM観察によって検出することによって、機能コアの電子状態を軌道分解して選択的に評価する。次に、窒化鉄原子層表面上に磁性単一原子を作製してSTM分光測定を行い、その近藤共鳴状態やスピンフリップ励起が吸着サイトによってどのように変化するかを電子軌道分解して解明する。さらに、STM探針を通常用いる非磁性W探針から強磁性探針に変えてSTM観察を行うことによって(スピン偏極STM)、電子軌道だけでなくスピンも分解して機能コアの起源を包括的・総合的に明らかにする。また、窒化鉄原子層機能コアのSTM観察と並行して、酸化マグネシウム原子層機能コアについても同様の測定をすすめる。得られた研究成果は国内外の学会で発表を行い、随時論文発表していく。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Twisted bilayer graphene fabricated by direct bonding in a high vacuum2020
Author(s)
Hitoshi Imamura, Anton Visikovskiy, Ryosuke Uotani, Takashi Kajiwara, Hiroshi Ando, Takushi Iimori, Kota Iwata, Toshio Miyamachi, Kan Nakatsuji, Kazuhiko Mase, Tetsuroh Shirasawa, Fumio Komori, Satoru Tanaka
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Journal Title
Applied Physics Express
Volume: 13
Pages: 075004~075004
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] SiC(0001)上のツイストグラフェンの電子状態のツイスト角度依存性2020
Author(s)
飯盛拓嗣, 今村均, 魚谷亮介, 宮町俊生, 服部琢磨, 中辻寛, 北村未歩, 堀場弘司, 間瀬一彦, 梶原隆司, Visikovskiy Anton, 田中悟, 小森文夫
Organizer
日本物理学会2020年秋季大会