2020 Fiscal Year Annual Research Report
電場によって誘起されるドメイン界面の解明とそれを用いた機能発現
Publicly Offered Research
Project Area | New Materials Science on Nanoscale Structures and Functions of Crystal Defect Cores |
Project/Area Number |
20H05185
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
清水 荘雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 独立研究者 (60707587)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 圧電体 / ドメインスイッチング / 電場誘起相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、電場誘起によるドメイン構造の変化によって引き起こされるドメイン界面、2相界面の構造解明と、それらを用いた圧電特性の機能向上を目的として研究を行っている。初年度にあたる2020年度においては、代表的な圧電体であるPbZrxTi1-xO3のエピタキシャル薄膜における相構造の変化について研究を行った。 PbZrxTi1-xO3 の結晶構造は、正方晶相と菱面体晶相の2つの相が知られている。(100)SrTiO3基板上に作製したPbZr0.54Ti0.46O3は、正方晶相と菱面体晶相の混相であった。この膜に対して、200 kV/cm以上の電場を印加するハードポーリング処理後に、XRD測定結果からドメイン構造の変化が観測され、菱面体晶ドメインと面内配向正方晶ドメインの分率が減少し、面直配向正方晶ドメインの分率が顕著に増加する現象を見出した。また、時間分解放射光X線回折の測定結果から、電圧印加中においてはさらに面直配向正方晶ドメインが増加していることが明らかになった。 PbZr0.68Ti0.3O3については、菱面体晶相単層からなる膜であり、またハードポーリング処理後も顕著なドメイン構造変化はXRDからは観測されない。一方で、電圧印加中においては面直配向正方晶ドメイン由来のピークが観測され、電場誘起相転移が起きていることが示唆される結果を得られ、さらに圧電性の向上を確認した。この膜について、ドメイン構造を圧電応答顕微鏡によって調査した結果、as-grown膜では、特徴的な構造がみられないのに対して、ハードポーリング処理後においては明瞭なドメイン構造が観察される。この結果は、ポーリング処理によって正方晶相の核とadaptive domain structureが形成され、圧電性の向上をもたらした結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の状況として、初年度のターゲットであるPbZrxTi1-xO3については我々が現在考えている”ハードポーリング処理"によるドメイン構造変化と圧電性の向上について、実証することができたといえる。次年度の計画としていた時間分解によるドメイン構造変化についても観測することができたものの、in-situでの圧電応答観察は不十分であると考えたため、当該区分であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
圧電応答顕微鏡による電場下のその場観察を行うことや、熱膨張率が異なる基板を用いて成長した膜についての測定や、ハードポーリング処理後のドメイン構造観察をするめる。さらには非鉛ペロブスカイト型圧電体や新規強誘電体など、PbZrxTi1-xO3以外の材料について、本研究のコンセプトであるハードポーリング処理によるドメイン構造の変化と機能向上が適応できるかについて、検討を進める。
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